研究課題/領域番号 |
18KK0086
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究副主幹 (40370382)
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研究分担者 |
伊藤 由太 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (30711501)
後藤 真一 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70334646)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | 超重元素 / 第一イオン化エネルギー / 相対論効果 / 電子衝撃法 |
研究実績の概要 |
原子番号が100を超える超重元素では、大きな中心電荷によって引き起こされる強い相対論効果により、その化学的性質が元素の周期律から逸脱する可能性が指摘されている。これらの元素は、重イオン核反応によって合成されるが、生成される同位体は全て単寿命であり、生成率も非常に小さいため、化学的性質の研究にあたっては、一度に一個の原子しか取り扱うことができない。本研究では、このような極限領域の元素を対象に、元素の化学的性質を特徴づける原子の電子配置に関する情報を得るため、最外殻電子の束縛エネルギーを直接反映する物理量である第一イオン化エネルギーの決定法の開発を目指している。 第一イオン化エネルギーの決定には、表面電離イオン化あるいは電子衝撃イオン化におけるイオン化効率の第一イオン化エネルギー依存性を応用する。核反応によって合成した超重元素同位体をエアロゾルガスジェット搬送法等によりイオン源へと導入し、このときのイオン化効率を測定する。 2020年度は、表面電離法によってイオン化ができない高い第一イオン化エネルギーをもつ元素に適用可能なイオン源として、ガスジェット結合型EBGP(Electron Beam Generated Plasma)イオン源を製作するとともに、2018年度までに開発したエアロダイナミックレンズを備えたテストベンチを構築し、安定動作条件の探索を行った。その結果、電子衝撃によってキャリアガスをはじめとする系内原子がイオン化され、イオンビームとして引き出されていることを確認した。 国際共同研究相手先であるスイス ポールシェラー研究所 R.Eichler部門長並びにロシア ドゥブナ合同原子核研究所 フレロフ核反応研究所 N.Aksenovグループリーダーとは継続して議論を進め、2020年度は113番元素ニホニウムモデル実験に参加の予定だったが、コロナ禍により延期となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍によって海外との行き来は完全に停止しており、113番元素モデル実験への参加が事実上不可能となったものの、表面電離法が適用できない高第一イオン化エネルギー元素に適用可能なガスジェット結合型EBGP(Electron Beam Generated Plasma)イオン源及びテストベンチの構築は順調に終了し、キャリアガスをはじめとする系内原子がイオン化及びイオンビーム引き出しが確認できたことから、概ね順調に計画は進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
テストベンチを用いたEBGPイオン源テストを進め、安定同位体ビーム生成の最適条件を決定するとともに、カリホルニウム252線源からの短寿命同位体を用いたイオン化効率を測定することで、元素依存性の確認を行う。 この後、オンライン同位体分離器(ISOL)に装着し、ガスジェット搬送に使用するエアロゾル粒子を用いた安定同位体イオンビーム生成を行う。 2021年度後期に、タンデム加速器からの重イオンビームにより合成した短寿命核種を用いて、オンライン実験を計画している。これにより、イオン源の性能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス対策による学会の開催中止及び国際共同実験の中止により、出張がなくなったため差額が生じた。差額は、次年度に予定している国際共同実験参加のための旅費及び消耗品費として使用する。
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