巨大ブラックホール(BH)から噴出する相対論的ジェットの生成・加速機構の解明は天文学における究極的課題の1つである。本研究ではM87など重要天体を対象に、1ミリ帯国際VLBI(EHT)による根元の観測と、欧州まで拡張した東アジアVLBI(EATING VLBI)による下流の高頻度モニターを組み合わせ、ジェット加速領域の観測的解明および駆動理論の検証を試みる。
昨年度に引き続き、本年度も新型コロナウイルスの影響により海外研究機関への渡航が全てキャンセルになるなど、当初予定していた国際共同研究を進める上では大変厳しい状況が続いた。それでも昨年度に引き続き、EATING VLBIによる観測そのものは各国関係者の協力のもと順調に行われ、M87を含む複数の重要ジェット天体を高頻度でモニター観測を継続することができたことは重要な収穫であった。これらの観測データは現在分析を進めており、過去数年間で蓄積したモニター観測結果と統合し、ジェットの速度場を高精度で導出することが可能になりつつある。以上の研究成果はイタリアの共同研究者のGabriele Giovannini教授らと共同で現在査読論文にまとめているところであり、2022年前半に投稿できる見込みである。
また昨年度の実施状況報告書でプランを述べたとおり、本来渡航費に使用予定であった研究費は、VERAバックエンド改良及び広帯域記録ストレージの購入などEATING VLBI国際観測網の性能向上に向けて有効活用し、観測を行った。最終年度のため本研究はこれにて完了となるが、本研究期間で芽生えた数多くの新たな研究の芽を、今後も引き続き詳細な観測を進めることで大きく実りある成果にしていきたい。
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