研究課題/領域番号 |
18KK0091
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高嶋 礼詩 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (00374207)
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研究分担者 |
黒柳 あずみ 東北大学, 学術資源研究公開センター, 助教 (20536510)
林 圭一 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部地質研究所, 主査 (30707906)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 白亜紀 / 国際標準年代モデル / 蝦夷層群 / 北海道 |
研究実績の概要 |
本年度は,北海道のアルビアン階/セノマニアン階境界とセノマニアン階/チューロニアン階境界を対象に,浮遊性有孔虫化石・炭素同位体比層序,放射年代測定用鉱物分離を実施した. アルビアン階/セノマニアン階境界は,北海道・幌加内町朱鞠内川および朱鞠内川支流のホテイ沢に露出する日陰ノ沢層下部で野外調査を行い,泥岩試料を約100試料,アルビアン階/セノマニアン階境界の上下の地層から凝灰岩を3試料採集した.凝灰岩に関しては,40Ar/39Ar放射年代測定用のサニディン,U-Pb放射年代測定用のジルコンを抽出し,ウィスコンシン大学のBradley Singer教授に送付した.また,炭素同位体比層序・浮遊性有孔虫化石層序についてはすでに測定・同定を終え,アルビアン階/セノマニアン階境界の層序学的位置も詳細に明らかにすることができた. セノマニアン階/チューロニアン階境界は,白亜紀でも最大規模の海洋無酸素事変(OAE2)が起こったことでも知られている.この境界については,前年度に実施した北海道苫前町大曲沢川における試料を用いて,炭素同位体比・浮遊性有孔虫化石・石灰質ナンノ化石層序の検討を行った.また,イギリス・ダラム大学のDavid Selby教授に依頼して,オスミウム同位体比の検討も実施した.その結果,セノマニアン階/チューロニアン階境界の層序学的位置だけでなく,OAE2発生区間も詳細にヨーロッパや北米地域と対比できることが明らかとなった.これらの対比の可結果,本セクションは世界で最もOAE2の地層が厚く保存されていることが判明し,OAE2の古環境変動を高解像度で解明するのに最も適したセクションであることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で対象としている白亜系の境界は,バレミアン階/アプチアン階,アプチアン階/アルビアン階,アルビアン階/セノマニアン階,セノマニアン階/チューロニアン階,チューロニアン階/コニアシアン階,コニアシア階ン/サントニアン階の6つの境界であるが,このうち,アルビアン階/セノマニアン階とセノマニアン階/チューロニアン階の境界については,微化石・炭素同位体比・オスミウム同位体比層序などにより,蝦夷層群において両境界の層準が特定され,境界層準付近に挟まる凝灰岩についても採集済みである.これらの採集済みの凝灰岩は,すでにアメリカ・ウィスコンシン大学において放射年代測定の準備が進められている.バレミアン階/アプチアン境界については,昨年度の調査で予察的に試料採集は終了している.また,チューロニアン階/コニアシアン階,コニアシアン階/サントニアン階,サントニアン階/カンパニアン階の境界については炭素・微化石層序が予察的に実施済みで,今後より詳細な検討を行う必要がある.アプチアン階/アルビアン階境界については,現在のところ未検討の状態で,境界がどの層準に位置するかを今後明らかにしなければならない.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,まず,海洋無酸素事変OAE1aがあることで重要なバレミアン階/アプチアン階境界と海洋無酸素事変OAE1bの存在するアプチアン階/アルビアン階境界の年代対比および年代測定を重点的に行う予定である.これらの境界の検討に最適の北海道芦別川上流地域で,平成31年度(令和元年度)以降は,この地域において試料採集を実施する.採取した泥岩試料については,微化石層序,炭素同位体比層序,オスミウム同位体比層序を実施して高精度の国際年代対比を行い,凝灰岩の放射年代(サニディンの40Ar/39Ar,ジルコンのU-Pb放射年代測定)を測定して年代モデルを構築する. また,国際対比精度の向上のために,以前にフランスボコンチアン堆積盆地で採集したアプチアン階~サントニアン階の試料の微化石・炭素同位体比層序の検討も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
学外に依頼している分析がまだ終了していないため,次年度に持ち越します.
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