研究課題
本年度は昨年度に引き続き,アメリカ,イギリスのチームの来日と共同野外調査の実施ができなかったため,再び日本チーム(代表・髙嶋,分担・林)のみでの調査・サンプリングとなった.本年度も北海道惣芦別川上流域のバレミアン最上部からアプチアンを対象とした.7月と8月に二回行われた野外調査で,バレミアン最上部からアプチアン下部の海洋無酸素事変OAE1a層が終了するまでの区間(蝦夷層群惣芦別川層)の地層約600mに対して,約30㎝間隔で合計2000サンプル近くの泥岩試料と,100試料もの凝灰岩試料を採集した.泥岩試料については英国・ダラム大学のセルビー教授がオスミウム同位体比の測定,ノースウェスタン大学のセイジュマン教授が炭素同位体比の測定を行った.一方,凝灰岩試料についてはジルコンのU-Pb年代測定をボイス州立大学のシュミット教授,サニディンの39Ar-40Ar年代測定をウィスコンシン大学のシンガー教授が測定した.研究代表者(髙嶋)はパイライト化度の測定,分担者(林)は渦鞭毛藻シスト化石分析および分担者(黒柳)は有孔虫分析を実施した.その結果,OAE1aに見られる顕著なオスミウム同位体比の負のスパイクと,炭素同位体比の大きな正のシフトが惣芦別川層下部に見出すことができ,OAE1aの開始した層準を高精度で特定することができた.この層準に挟まる凝灰岩の放射年代は,ジルコンのU-Pb年代およびサニディンの39Ar-40Ar年代共に,119Maであることがあきらかとなった.我々が研究を開始した時点で,OAE1aの開始年代は,125Maとされており,最近改定された年代モデルでも,121Maとされてきた.この結果は,従来考えられてきた年代よりも若い年代値であることが明らかになり,白亜紀の年代モデルの再構築に大きな貢献ができた.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
Journal of Asian Earth Sciences
巻: 205 ページ: 104570~104570
10.1016/j.jseaes.2020.104570
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 1~7
10.1038/s41598-021-99427-1