研究課題/領域番号 |
18KK0094
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
狩野 彰宏 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (60231263)
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研究分担者 |
高島 千鶴 佐賀大学, 教育学部, 准教授 (10568348)
白石 史人 広島大学, 理学研究科, 助教 (30626908)
古山 精史朗 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (60760527)
奥村 知世 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任助教 (90750000)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 動物進化 / エディアカラ紀 / 化学層序 / 安定同位体 |
研究実績の概要 |
本研究は「全球凍結後の層状化海洋でのエサの増加が多細胞動物の進化を促した」という独自の仮説を検証するために,海綿・刺胞動物由来の痕跡を含む世界各地のクリオゲニア~エディアカラ系堆積岩を対象に多項目の分析を行うものである。 本年度はこれまで中国・ブラジル・オーストラリア・モロッコで採集した試料をもとに,詳細な組織観察と同位体分析を行った。初年度ではあるものの,ブラジルから採集したエディアカラ系のストロマトライトについては国際誌に成果を公表することができた。このストロマトライトについては,縞状構造を形作る微生物がシアノバクテリアであることを特定し,その光合成がバイオフィルム内でのリン酸カルシウムの過飽和度を増加していることが示された。 また,オーストラリアで採集した全球凍結前に堆積した蒸発性炭酸塩の鉱物組成と同位体を分析し,当時の海水化学組成が現在と大きく異なり,カルシウム濃度が低く,溶存炭酸濃度が高いことを示唆した。この条件を満たすためには,当時の海水のpHは現在よりかなり低い可能性がある。もしそうであれば,二酸化炭素は大気から海洋へと移動を促し,低下した温室効果により寒冷化が起きたとも考えられる。中国やモロッコで採集した試料を用いた研究も着実に進展しつつある。 さらに,ストロマトライトのモダンアナログであるトラバーチンに関する研究をまとめ著書を執筆したことも重要な成果である。この中で,ストロマトライトにできる縞状構造にいくつかのタイプを識別した。また,原生代のストロマトライトに見られるいくつかの縞状組織は日輪である可能性があり,それを頼りに,当時の海洋環境を復元できる可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度にもかかわず,具体的な成果を公表できており,研究は計画通り進展していると評価できる。オーストラリアでの成果は,「全球凍結がなぜ起きたのか」という地球史上の重大な問題に対し解答を与える可能性があり,将来的な発展も見込める。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究者の奥村が産休・育休を取るため一時本研究を離れることになった。そのため,各種分析を担当する特任研究員を雇用することとする。 その上で,本年度はモロッコ,オーストラリア,ブラジルにおいて,トニア紀~エディアカラ紀(8~5.5億年前)の地層の調査と試料採集を進め,1) 海綿動物の痕跡と,2) 全球凍結時の生命の避難場所の探査し,3) 当時の海水の物理化学的条件について考察する。採集した試料の分析作業としては,組織観察,高解像度の元素分布の復元,炭酸凝集同位体を含めた各種同位体分析を行う方針である。 また,海外研究協力者である中国科学院の王偉とは軟体部の化石化について議論を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画で行う予定だった海外調査が,受け入れ先との調整がつかず今年度内の実施を断念した。代わりの調査は次年度に行う予定である。また,本研究で実施する大量の分析作業を担当するための特任研究者の雇用する予定である。
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