研究課題/領域番号 |
18KK0096
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
吉田 孝紀 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (00303446)
|
研究分担者 |
河上 哲生 京都大学, 理学研究科, 准教授 (70415777)
江島 輝美 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (70712173) [辞退]
齋藤 武士 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (80402767)
酒井 哲弥 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (90303809)
森 宏 信州大学, 学術研究院理学系, 助教 (80788183)
中嶋 徹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究職 (60912558)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
|
キーワード | ヒマラヤ / チベット高原 / ベンガル海底扇状地 / モンスーン / 低ヒマラヤ帯 |
研究実績の概要 |
ベンガルファン(ベンガル深海扇状地)は,ヒマラヤ山脈の形成を直接反映して形成されたと考えられる.本年度の研究では,この河川系に砕屑物を供給する地質帯のうち,原生界を主体とした変成岩類からなる低ヒマラヤ帯を調査し,そこから供給される砕屑物の性質を明らかにした.特に現地調査においては新鮮岩から風化岩までを採取し,供給源地での風化に伴う化学組成の変化を把握することに努めた. 2022年11月中旬~12月初旬において,中央ネパール・カトマンズ北部,及び東ネパールDharan地域において調査を行った.これらの地域には,低ヒマラヤ帯に属する原生界Kuncha層であり,主に泥質岩・砂岩を源岩とする結晶片岩からなる. このうち,カトマンズ北部地域のKathamndu- Kakai road沿いでは,砕屑物を大量に供給すると考えられる大規模崩壊地において試料を採取した.その結果この地域の地質体は,大部分が白雲母片岩からなり,一部は黒雲母を含む片岩からなることがわかった.これらはほぼ均質であるものの黒雲母の風化変質によって全岩化学組成の変化が生じると推定された.同じくカトマンズ北部地域のKakani-Trishuli road 沿いでは砂岩卓越の砂岩泥岩互層を源岩とする結晶片岩類からなり,黒雲母片岩,白雲母片岩が観察できた.強風化サンプルにおいては,白雲母片岩の鉱物変質は弱い一方で,黒雲母片岩の黒雲母の変質は著しく,粘土鉱物の生成が認められた.そのため,黒雲母片岩の現地性風化はその化学組成や鉱物組成を大きく変化させる可能性が示唆された.次年度においてこれらの岩石の化学組成を検討し,その特徴を明らかにする予定である. Dharan地域ではDharan市内を流れるSardu Khola,Sewti Kholaの河床堆積物について試料採取を行った.現在,その鉱物組合せと重鉱物組成,岩片組成を検討中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年から2022年初頭での著しいコロナ禍において,現地調査が困難であったため,室内分析のための計画的な試料採取が実施できなかった.本年度は帰国時の水際対策によって調査日程に影響があったものの,現地調査を行い,試料採取を実施できた.しかし,当初の全体計画とは解離があり,「遅れている」と判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に採集した試料について化学分析・同位体分析を進め,ベンガル海底扇状地の海底コアとの比較を進める.また,次年度も現地調査を実施し,採集が遅れているガンジス川水系での試料採取を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍におけるネパール入国直後の行動制限と出国時のPCR検査,帰国時の行動制限によって十分な調査日程が確保できなかった.また感染症対策の徹底により,海外渡航を制限する大学の方針もあり,十分に現地調査ができなかったことが理由として挙げられる. 次年度においても現地調査を実施し,計画的な試料採取とその分析を行うつもりである.
|