研究課題/領域番号 |
18KK0097
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
池田 昌之 静岡大学, 理学部, 助教 (10635882)
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研究分担者 |
尾崎 和海 東邦大学, 理学部, 講師 (10644411)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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キーワード | 天文学的周期 |
研究実績の概要 |
本研究では、中生代の地球環境変化とその生態系への影響について、超大陸と超海洋の地質記録と物質循環モデルを統合することにより検討を進めている。特に、地球環境変化の要因として重要なミランコビッチ・サイクルにおける日射変化の影響の増幅機構の仮説として,乾燥化による風成塵増加・植生縮退が水循環を抑制して、さらに乾燥化する乾燥化フィードバックが働いた可能性を検討している。この影響の長期的な蓄積に伴い、海水準や風化速度、大気CO2濃度が大きく変わり、生態系へも影響した可能性がある。そこで、陸域環境、特に砂漠堆積物とその化学風化、及び風成塵フラックスの時空間変遷を、北米および中国の陸成層、および日米の深海層から検討し、これらの結果を制約とした物質循環モデルにより、日射が地球環境に与えた影響を定量評価する。さらにこれらの結果を、化石記録との比較することにより地質時代境界の群集変化への影響について検討している。本年度は季節の関係により現地調査をあまり行えなかったが、予察的な調査結果、及び文献データを統合・解析を進めると共に、解像度の向上を試みた。また、ミランコビッチ・サイクルで中生代の日射変化がどの程度変わりうるかについて、検討した。また、分担者尾崎はGEOCARBSULFvolcモデルに新たなweatherabilityに関するパラメータを導入し、地質記録に残された大気CO2変化を説明するために、どのくらいのweatherabilityが必要かを定量評価する試みを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、代表者が国内調査を進めると共に、分担者尾崎が物質循環モデルのシステム開発を行った。代表者は国内の深海性層序チャートの詳細岩相層序の再記載を行い、測定精度をサブミリスケールに向上するシステム開発を試みた。これにより、従来より高精度な測定を行うことができるようになると期待される。さらに、化石記録の解析を進め、従来は100万年から1000万年の時間間隔ないし層序区間で区切った多様性、出現率、絶滅率の検討が行われてきたが、この区切り方が結果に大きく影響するため、層序記録に基づいた生データの検討を行い、従来より高時間分解能での化石群集解析を行った。ただし、層序記録や化石記録の不完全性を評価する方法に課題はあり、これらの誤差評価を行う予定である。分担者尾崎は既に開発されているGEOCARBSULFvolcモデルに新たなweatherabilityに関するパラメータを導入し、地質記録に残された大気CO2変化を説明するためにどのくらいのweatherabilityが必要かを計算し、これを実現しうる他の風化に関するパラメータの影響やそれらと地質記録の整合性について、新たな知見を得つつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現地調査を行い、これまでの国内調査および文献調査で得られた結果から推定される陸域の砂漠堆積物分布や遠洋域の風成塵堆積速度変動に関する仮説の検証を行う。また、Krause et al. (2018)がGEOCARBSULFモデルを更にバージョンアップしたGEOCARBSULFORを提唱したため、このモデルも組み込むことによって、weatherabilityの変化に対してどのパラメータがどの程度影響しうるのかを検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
交付が10月だったことにより、次年度海外調査を行うため。また、購入を予定していた装置を購入した場合、今後の調査費用の捻出が困難である可能性が判明したため、現在購入を予定していた装置と別の装置を購入するか、もしくはレンタルするか検討中である。
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