研究課題/領域番号 |
18KK0098
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤波 初木 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 講師 (60402559)
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研究分担者 |
佐藤 友徳 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (10512270)
平田 英隆 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (30808499)
高橋 暢宏 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (60425767)
藤田 耕史 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (80303593)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | ヒマラヤ山脈 / 氷河 / 夏季降水量 / 現地観測 / 日変化 / 極端降水現象 |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナウィルス蔓延のため、2019年度に本研究課題で新規に開始した東部ネパールヒマラヤ・ロールワリン地域での降水量観測に大きな支障が生じた。プレモンスーン期(4~5月)とポストモンスーン期(10~11月)に計画されていた降水量観測サイトでの測器メンテナンスおよびデータ回収ができなかった。そのため、2020年暖候期のデータは現地のデータロガーに残されたままである。 一方、ロールワリン地域のトラカルディン氷河末端部に設置されている自動気象観測装置(AWS; 標高4800m)で観測された2016~2018年の夏季降水量と気象要素のデータ、2019年暖候期の降水量観測データの解析や数値シミュレーションの研究は大きく進展した。氷河末端部のAWSで観測された夏期降水量データから、降水量に日中と夜間の1日2回のピークがあることがわかった。衛星降水レーダ(TRMM-PR)による解析から、これらの1日2回の降水量ピークはネパールヒマラヤにおける標高500~1000mの領域および2000m以上の高標高域での一般的な特徴であることが示された。日中のピークは対流性降水の割合が大きく、夜間のピークでは層状性降水の割合が増加する。日中の降水量ピークは、太陽放射による斜面加熱で斜面上昇流が発生し、気塊が斜面に沿って上昇する際に凝結することで生じる。一方、夜間のピークはヒマラヤの風上側の平野部で、夜間にヒマラヤに向かう下層風が加速することで生じることがわかった。これらの結果は国際誌に投稿中である。 10月にオンラインで行われた気象学会および12月にオンラインで開催されたAGU Fall Meetingで関連する発表が行われた。また、12月10日にオンラインで本科研費の関係者による研究集会を行い、研究の進捗状況の確認と今後の方針を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ解析や数値シミュレーションによる研究は計画通り概ね順調に進展している。一方で、コロナ禍により東部ネパールヒマラヤでの降水量観測は観測サイトの状況把握もデータ回収もできていない。そのため、全体としてやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はコロナ禍が続くことも想定し、ネパールヒマラヤでの降水量観測が再開できるように準備をしながら、データ解析や数値シミュレーションによる研究を中心に課題を推進する計画である。 ネパールの感染状況が改善した段階で、ネパールの共同研究者の研究グループが現地に入り、観測測器の状況把握とメンテナンスを行い、観測の再開を行う予定である。また、長期で観測測器のメンテナンスができていいないため、観測測器の交換なども検討する。 これまでの解析結果の論文化を積極的に行う。また、オンラインで行われる国内学会や国際会議にも積極的に参加し、研究内容の公開を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で海外渡航ができず、ネパールヒマラヤでの降水量観測ができなかった。また、国内外で予定されていた出張ができなかった。これらの旅費を次年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。
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