研究課題
脈動オーロラは、数keVから数十keVのエネルギーを持つ電子が、宇宙空間から地球の超高層大気に向かって間欠的に降り込んでくることで発生すると考えられている。一方、脈動オーロラ発生時には、よりエネルギーの高い、準相対論的高エネルギー電子も同時に降り込んでいるというモデルが提案されている。このモデルは放射線帯構成電子の消失過程の理解に寄与するなど重要と考えられる。しかし、これまでのところ十分な高時間分解能で数 MeV に達する高エネルギー電子を脈動オーロラ発生時に直接観測した例はない。我々は脈動オーロラ発生時の高エネルギー電子観測を実現するため、米国 NASA の観測ロケット計画 (LAMP) に提案段階から参画している。本研究では高エネルギー電子観測器、オーロラカメラなどの観測機器パッケージ (PARM2) を開発し、LAMP 観測ロケットに搭載、打ち上げ、観測を行う。本年度は日本側開発機器 PARM2 に関する NASA とのインターフェース調整を行ったほか、観測機器の開発を行った。また、NASA にて行われた LAMP 計画のデザインレビューに参加した。PARM2 は複数の観測機器で構成されるが、電源、通信に関するロケットインターフェースを一つの専用装置 (COMMON-E) に集めている。このため、機構部分のインターフェース調整は必要であるものの、各観測機器について基本的に PARM2 内部で開発を可能としている。そして、各観測機器について、機構設計、詳細電気設計、および各開発要素における性能試験を行った。なお、新型コロナウイルスの影響により、NASA による LAMP 観測ロケットおよび搭載機器の開発が中断した。また、日本側開発機器の開発についても各研究機関における出張などの抑制を受け、試験などを来年度以降に延期している。
3: やや遅れている
LAMP 観測ロケット搭載機器の開発はすでに開始しているが、2019年初頭の米国連邦機関閉鎖によって NASA も閉鎖されたため、インターフェース調整に時間を要した。また、新型コロナウイルスの影響を受け、本年度末より NASA 側の開発が中断している。日本においても出張抑制などが行われており、機器の試験などに遅れが生じている。一方、NASA Wallops Flight Facility において LAMP ロケットのデザインレビューが行われ、一部ではあるがロケットインターフェースなどの調整も行った。この調整を受け、COMMON-E (ロケットとの電気的インターフェースを担う装置) についても設計・製作を開始した。なお、COMMON-E の開発にあたっては、単体試験を行うためのロケットインターフェース模擬装置が必要となるため、本装置についても設計・製作を行った。
LAMP 観測ロケット搭載観測器開発を継続する。観測ロケットシステムとのインターフェース調整は一部を除き合意に至っており、COMMON-E (対ロケットインターフェースを集約し、日本側観測機器との通信・電力供給をとりもつ機器) の設計、製作、単体機能試験を進める。また、各観測機器についても製作、単体機能試験などを行った上で COMMON-E とのかみ合わせ試験を行う。そして、NASA にて行われるロケットとの噛み合わせ試験を経て打ち上げに供する。なお、現段階では新型コロナウイルスの影響による LAMP 計画の開発スケジュール遅延がどの程度となるかは不透明であり、NASA 側と情報共有しながら研究を進める。LAMP 観測ロケット実験では脈動オーロラ発生時に高エネルギー電子観測を行うため、打ち上げ期間中にオーロラ光学観測、電波観測などの地上支援観測が必要である。本研究では LAMP 打ち上げ期間に地上観測機器をロケット飛翔予定軌道下周辺に持ち込み、観測を行う。LAMP 観測ロケットはアラスカ / Poker Flat から打ち上げられる予定であり、現地における観測場所の確保や機器運搬、運用などについて、NASA やアラスカ大学などとの調整を行う。
新型コロナウイルスの影響により、本年度後半に予定していた機器試験などが中止または延期となったため、次年度使用額が生じた。
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