研究課題/領域番号 |
18KK0101
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
稲垣 史生 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋掘削科学研究開発センター, 研究開発センター長代理 (50360748)
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研究分担者 |
鈴木 志野 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 特任主任研究員 (10557002)
星野 辰彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (30386619)
浦本 豪一郎 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任助教 (70612901)
PAN DONALD 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, ポストドクトラル研究員 (90784851)
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研究期間 (年度) |
2019-02-07 – 2020-03-31
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キーワード | 生命生息可能条件 / 閉鎖系地下水圏環境 / 地下生命圏 |
研究実績の概要 |
本研究では、カナダ・オンタリオ州のキッド・クリーク鉱山で発見された地下約2.4kmの岩体から湧出する地球最古(始生代、約26.4億年前)の閉鎖系地下水圏環境を対象に、当該環境に生息する微小な地下微生物群の生態とゲノム進化および長期生存メカニズムの解明を目指している。仮に、当該閉鎖系環境に地下微生物生態系が存在すれば、ラジオリーシス等の何らかの非生物学的なプロセスに依存する生命存続メカニズムが機能していることになる。平成30年度は、本国際共同研究の相手先であるカナダ・トロント大学のBarbara Sharwood Lollar教授とキッド・クリーク鉱山内の地下水圏環境の実態とサンプリングに係る注意点など綿密な議論を重ねると共に、本共同研究により得られる科学的成果の意義やアウトカムについて意見交換を行った。それらの議論の一部を、Oceanography誌に論文として発表した(Inagaki and Taira, 2019)。また、本年度の成果として特筆すべきは、トロント大学のチームにより、当該地下環境に水素・アルカン資化性の硫酸還元菌を含む微小な微生物群集の存在を示唆する培養実験(MPN法)の予察結果を得たことである。この予察結果は、非生物学的なプロセスでは説明のつかない硫黄同位体分別効果の測定結果を支持し、当該環境に地下微生物のエネルギー呼吸を介した硫黄循環が存在することを示唆している。現在、現地におけるサンプリング手法や各種分析手法について引き続き協議を重ねている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の交付内定が2019年2月であり、2018年度に予定していた内容の多くを2019年度以降に実施しなくてはならないため、進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、カナダ・トロント大学と共同で、キッド・クリーク鉱山内から湧出する地下水を大量ろ過し、分析用の微生物細胞が濃縮された試料を得る。同時に、当該環境の微生物量を把握し、特定系統の微生物細胞を可視化するため、現地で顕微鏡観察やフローサイトメトリー計測用の細胞固定試料を調整する。当該地下水圏環境におけるおおよそのバイオマス(微生物量)を把握した上で、メタゲノムをはじめとするDNA分析用試料の採取を行う。バイオマスが極めて小さい場合には、現地で地下水湧出ラインにフィルトレーションキットを長期間設置し、DNA分析に必要な細胞数を確保する。2020年度には、メタゲノム解析を進めると同時に、安定同位体標識法を用いたインキュベーション実験を行い、当該環境における地下微生物生態系の機能や生存戦略を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の採択時期が2019年2月であったため、2018年度に予定していた海外調査や地下水圏微生物群集の一次解析を延期し、当該年度に予定していた研究活動の多くを2019年度に実施することとした。次年度以降に、これらを支出予定である。
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