研究実績の概要 |
本研究は、我が国の高齢者の多くが罹患している変形性関節症への新しい治療体系である、関節内の軟部組織(軟骨・半月板・靭帯・関節唇等)の再生医療(生体材料 等の移植も含む)の確立を目指すものである。現在診療で関節内軟部組織の形態学的特徴を捉えることのできる画像の中で、質的評価として定量的評価が行えるという撮影方法に定量的MRI(緩和時間)があるが、これらが組織自体の力学特性と関連性があるか明らかになっていなかった。そこでこれを明らかにするため、日本で入手困難な新鮮凍結屍体組織中の関節内軟部組織の力学特性とMRIの画像評価の関連性を調査すること等の定量的画像評価と力学特性の関連性を調査する研究を行ってきた。 最終年度としてまとめることができた研究は、大きく分けて3つある。焦点をあてた股関節唇について、この組織強度とMRI画像の定量的数値の関係において、高い相関を示すことが明らかとなった(Mozamin D, Hananouchi T(共同筆頭著者), et al 2024 in press)。他、本科研費の研究分担者(大槻周平氏)とともに、開発したプローブ機器を用いて膝関節軟部組織(半月板)の強度に関わる研究について、英語論文として報告予定である(採択済、出版準備中)。また、この研究の継続のおかげで、国内でも定量的MRIを使用できる実施体制を確立でき、膝関節や股関節(大腿骨骨頭のみ)の関節軟骨について、緩和時間と強度に高い相関があることを示すことができた(Hananouchi T, et al. 2023)。 研究期間全体を通じていえることは、これまで明らかになってこなかった関節軟部組織の機械特性自体がわかり、また、それらが、定量的MRIで得られる緩和時間と相関することが分かり、この結果を来るべき整形外科再生医療の評価指標として、使用していけることを確信している。
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