研究課題
小惑星からのサンプルリターンでは,はやぶさに代表される瞬間のタッチアンドゴー方式から,安全な長時間滞在へ向けたより高度な技術開発が求められている.本研究では,小惑星への安全な長期滞在を実現することを目指し,落下棟を利用した微小重力実験で粉粒体/流体と機械の相互作用に関する基本データを取得し,探査機に影響する卓越した作用力を力(反力)の観点で単純化したモデルを獲得することを目的としている.基本データ取得のためには外乱が少なく重力品質の良い長い時間の微小重力実験を行うことが必須であり,それを日本国内で行うことは難しいため,海外機関(DLR)と協力の下,ドイツの落下棟施設(ZARM)を利用する.2019年,ZARMで計10回の落下試験を行った.反力推定モデルの応答評価を行うためのデータを得ただけでなく,レゴリスが予想よりもはるかに飛散する様子を観測することができ,低重力環境にあるレゴリス挙動の再考を必要とする結果を得ることができた.また,ベアタンクを模擬した容器に液体を封入し,着陸機を想定した速度変化を加えた動作を容器にさせ,スロッシング荷重の計測とCFD検証に用いる応答結果を取得した.2020年度,これらの結果をマクロモデルならびにDEMモデル,CFDモデル,縮退振り子モデル等で再現を試みた.粉粒体での応答については,低重力でしか見られない挙動を再現するモデル式を新たに導出することができ,一方,CFD解析の妥当性を検証し, 同じCFDコードを用いて実機サイズのCFD解析を実施し,スロッシングにより生じる荷重やモーメントを評価することができた.さらに,上記試験で得られた土壌の物性値と,落下試験結果を用いたコリレーションを通して,SPHによる粒子シミュレーションを行うための土壌モデルを構築し,そのモデルを用いて,微小天体の実環境下における採取特性を明らかにした.
すべて 2020
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)