研究課題
本研究では、多元素機能傾斜膜及びナノ微細加工技術を融合させることで、全て特性が異なる1000種類以上のセンサ素子から成り、少数センサの不具合及び素子間のばらつき誤差を劇的に低減した‘高堅牢性超多チャンネルセンサアレイ’を創製し、従来原理的に困難であった多成分標的分子群の同時検出・識別機能を実証することで、多角的な化学情報の収集・蓄積・利活用を可能とする革新的分子認識センサエレクトロニクスの学術基盤創成を目的としている。当該年度の研究実績を以下に示す。①多元素機能傾斜膜による超多チャンネルセンサアレイの創製:小型基板上にZnO及びWO3を傾斜堆積し、その後界面原子拡散効果を介して機能傾斜酸化物膜を作製した。各種成膜条件(膜厚・温度)と組成・結晶性・電気伝導性・分子センシング特性の相関性を検討し、目的とする機能傾斜特性を得ることに成功した。②リアルタイム計測技術及び高堅牢性センシング法の構築:電子線リソグラフィによりクロスバー構造による1000チャネル素子を構築し、本素子構造においても良好な分子センシング特性が得られることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
H30年度は①二元系機能傾斜酸化物膜の作製と分子センシングの機能実証、②1000チャネルセンサ構造の構築の二点を当初の目的としていたが、そのいずれの目的も達成できており、本研究課題の最終目的達成へ向けて順調に研究を遂行することができているため。
今後の計画として、以下の3点に取り組む。①多元素機能傾斜膜による超多チャンネルセンサアレイの創製:前年度までに原理検証を終えている機能傾斜膜の元素の組み合わせを変化させ、多種多様な酸・塩基性を有する金属酸化物半導体材料による機能傾斜膜を構築する。更に共同研究先であるタイ国立電子コンピューター技術研究センターへ訪問し、角度可変多元同時成膜技術により多元素組成による機能傾斜膜の構築を目指す。②リアルタイム計測技術及び高堅牢性センシング法の構築:高速測定機能を有する高速電子回路をセンサデバイスに実装し、超多チャンネルセンサアレイを構成する全センサ素子のリアルタイム計測を実証すると共に、分子センシングのシグナル抽出も併せて行う。③多成分標的分子群の同時検出へ向けたデータ解析法の構築:多成分標的分子群の同時検出・識別機能の検証へ向けたデータ解析法(データマップ・マイニング・機械学習技術)の構築を目指す。
当該年度はテクニカルスタッフの人件費、及び消耗品費に助成金を使用する計画であったが、共同研究先であるタイ国立電子コンピューター技術研究センターに所属する博士研究員を雇用することで本研究をより円滑に遂行することが可能になるため、繰越金を次年度の研究員雇用費及び消耗品費として使用する予定に変更した。
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Nano Lett.
巻: 19 ページ: 2443-2449
10.1021/acs.nanolett.8b05180