研究課題/領域番号 |
18KK0118
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 周平 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (00378811)
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研究分担者 |
鈴木 裕識 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(つくば中央研究所), 研究員 (20762272)
安井 宣仁 近畿大学工業高等専門学校, 総合システム工学科 都市環境コース, 講師 (90547481)
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研究期間 (年度) |
2019-02-07 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / 水循環系 / アジア / 動態解析 / 路面粉塵 |
研究実績の概要 |
ベトナム国ダナン市、ネパール国カトマンズ市、滋賀県草津市において道路面塵埃中のマイクロプラスチック汚染の現況調査結果を整理して、Environmental Pollutionに発表した。ダナン工科大のQuang博士、トリブバン大のSangeeta博士との共同研究の成果であり、都市水循環系の一経路である道路面塵埃にもマイクロプラスチックが存在し、特にカトマンズ市で高い結果を示した。さらにカトマンズにおける存在実態を詳細に解析し河川への負荷源の検討を行った結果を、ネパール国カトマンズ市におけるマイクロプラスチックの存在実態の把握および河川への負荷源の推定として、土木学会論文集G(環境)に発表した。さらに、The North Pacific Marine Science Organization-2019 Annual Meetingにおいて口頭発表した。若手研究者に国際学会での口頭発表という機会を与えることができた。ダナン市においてはマイクロプラスチックに吸着し水環境中を挙動していると考えられる多環芳香族炭化水素類について、河川、道路面のみならず、水循環系における挙動の把握を試みた。カトマンズ市においては水利用目的別のペルおよびポリフルオロアルキル物質の排出原単位を検討した。同物質の一部も疎水性がありマイクロプラスチックに吸着して挙動していることが分かっており、今後は発生源の推定に向けて研究を展開する予定である。ダナン市におけるPAHsの挙動およびカトマンズ市におけるPFASsの挙動に関する研究では、それぞれ、環境技術学会優秀発表賞、水環境学会年会優秀発表特別賞を受賞した。 病原微生物の測定において、多剤耐性大腸菌の紫外線照射における消毒特性を評価した。水中の医薬品類7種を対象に、PE、PET、PS、Ny6の4種マイクロプラスチックへの吸着特性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネパール国カトマンズ市、ベトナム国ダナン市におけるマイクロプラスチック汚染の現況調査および分析を行った。マイクロプラスチック汚染については、日本と比較して、非常に高レベルの汚染状況であることが分かった。ベトナム国ダナン市では都市河川であるフーロック川流域での水循環フローの作成がおおよそ仕上がったので、新興国の水循環系におけるマイクロプラスチックの挙動の把握を進めているところである。また、紫外線照射による劣化指標の開発も進んでおり、特に道路面上でのマイクロプラスチックの生成機構についての実験系を確立することができた。 多剤耐性菌、大腸菌ファージ等の病原微生物の測定、検出手法の確立が行えている。現在は、紫外線ランプとして一般的に使用されている低圧紫外線ランプをはじめ高圧紫外線ランプ、深紫外LED(UV-LED)による病原微生物の消毒特性を評価するための整備体制が整っている。 化学物質の吸着実験の体制を整え、遅延なく実施した。また、微小マイクロプラスチックの計測手法の開発に関して、ファイバー状(繊維状)MPsの検出については、研究開始時点で手法を整理しており、取り組める体制が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者の土木研究所鈴木博士と近大高専の安井博士とともにベトナム国ダナン市のフーロック川流域を対象に、マイクロプラスチックの挙動の把握とマイクロプラスチックに吸着した微量化学物質および病原微生物の実態について調査を行う。その際、ダナン理工科大学のQuang博士と協力し調査を進める。ネパール国カトマンズ市については、秋ごろに京都大学の大学院生2名とともに流域情報の収集とマイクロプラスチック汚染の現況調査および発生源の推定にかかる基礎調査を実施する。その際、トリブバン大学のSangeeta博士と連携し調査および情報収集を進める。 病原微生物として引き続き、検出測定が容易な大腸菌ファージならびに緑膿菌、黄色ブドウ球菌等の環境中に常在している菌を標的に、実験室規模での紫外線消毒実験ならびに光回復特性を把握するとともに、より実現場での紫外線の汎用性を考慮し流水式での消毒の検討も行う予定である。また現状、蓄積されたデータを取りまとめ対外公表を行う予定である。 化学物質の吸脱着特性として、引き続き、都市水循環系において影響が懸念される物質の吸脱着特性を検討する。また、環境中でMPsに吸着している化学物質については、その実態が不明であることから、精密質量分析による多成分一斉スクリーニングを実施することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験および分析作業がスムーズに進行し、また予定していた学会参加旅費が新型コロナウィルスの影響により中止となったため、一部の経費を次年度に繰り越すこととなった。次年度では、実験補助員の賃金や、分析に用いる試薬・器具類の消耗品購入に充てる予定である。 病原微生物の測定において予備実験も含め経費に計上していたが、予備実験および本実験がスムーズに進行したこともあり、一部の経費を次年度に繰り越すこととなった。次年度では、病原微生物の測定に必要となるピペットチップ、シャーレ類の実験消耗品購入に充てる予定である。 室内実験がスムーズに進行し、また、予定していた現地調査・視察を実施しなかったために、計上していた一部の経費を次年度に繰り越すこととなった。次年度では、主に、実験補助員の賃金や、化学分析に用いる試薬・器具類の消耗品購入に充てる予定である。
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