研究課題/領域番号 |
18KK0119
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中山 恵介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60271649)
|
研究分担者 |
渡辺 謙太 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (20725618)
清水 健司 神戸大学, 工学研究科, 客員准教授 (40821939)
丸谷 靖幸 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 特任助教 (50790531)
久保 篤史 静岡大学, 理学部, 助教 (90803958)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
|
キーワード | CO2フラックス / DIC / TA / SAV / hydrodynamic / global warming |
研究実績の概要 |
平成30年10月からの研究開始であることから,平成30年度は次年度に向けた詳細な研究計画の策定が主たる活動であった.しかし,申請書を提出した年度初めから関連研究は進めておいた.本研究では,オーストラリアの西オーストラリア州パースにおけるLake Mongerが対象としているが,比較のため国内の北海道に位置するコムケ湖も研究対象としている.北見工業大学の駒井准教授により,平成30年8月8日に観測が実施された.測定項目は,水温,塩分,溶存無機炭素(DIC)であり,湖内18地点において採水を行った.アマモ群生地の調査については,ドローンより空中撮影を行い,存在範囲を同定した.その結果を利用し,8地点はアマモが存在する地点,10地点はアマモが存在しない地点において採水を行った.バルク的なCO2フラックスの推定が可能であるかどうかを検討するため,計測されたDICの空間分布特性を調べたところ,アマモの存在の有無がDICの値を大きく決定づけていることが分かった.この点は,土木学会北海道支部の支部論文集において報告した.さらに,得意な分布もみられ,その分布は風による影響であることが示唆された.よって,今後のLake Mongerを含めた解析でも,物理場である流動場の影響も考慮した検討が必要であることがあらためて示された.
Lake Mongerにおける観測計画については,2019年度の11月に代表と分担者全員で現地観測を行うことを計画した.2019年度の観測では,サンプルの輸出入を行うことなく,現地で計測できる項目のみを対象とすることとした.具体的には,水草群生地内外の溶存酸素濃度の分布や水温,および流速などの物理環境場を中心として計測を行う予定である.さらに,水草群生地の空間分布や水草の存在密度などを計測する.以上,Lake Mongerに関しては,詳細な実施計画を策定することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,気候変動の緩和を推進するため,光合成によるCO2の吸収効果が極めて高い水草・藻場を効率よく活用し炭素貯留するための手法を提案することを目的としている.対象としているのは,西オーストラリア大学の研究グループにより湖沼において発生する貧酸素水塊が水草の枯死を早め季節変化をコントロールしていることが見出されたオーストラリアの西オーストラリア州パースに存在するLake Mongerである.平成30年度は,比較のために,Lake Mongerと同規模の湖である北海道のコムケ湖における観測を実施した.観測は,研究協力者である北見工業大学の駒井准教授により行われた.平成30年7月と8月の2回に渡って約20地点において採水が行われた.その際,アマモの存在が水中CO2分圧の分布にどのように影響を及ぼしているかを検討するため,アマモの有無により約10地点ずつ採水を行った.さらに,ドローンによるアマモ場の存在範囲の効率の良い計測に関しても検討が行われた.その結果,ドローンを利用することで高精度にアマモ場の存在範囲を推定できることが分かった.さらに,採水の結果から,アマモの存在の有無により溶存無機炭素(DIC)が大きく影響を受けて分布することが示された.これらの結果は,同様な規模のLake Mongerにおける観測において重要な知見を与えるものである.
Lake Mongerにおける観測に関しては,代表及び分担者全員で11月(岐阜大学)および3月(静岡大学)に会合を2回持ち,詳細について検討を行った.その結果,2019年度の11月に代表と分担者全員で現地観測を行うことを計画し,まずは現地で計測できる項目のみを対象に観測を実施することとした.予定している測定項目は,水草群生地内外の溶存酸素濃度の分布や水温,および流速などであり,水草群生地の空間分布や水草の存在密度なども計測する予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は,昨年度と同様な計測に加えて,Lake Mongerにおける観測も実施する予定である.まず,比較対象領域である北海道東部に位置するコムケ湖において,ドローンを利用したアマモ場の存在範囲の計測を実施する.実施者は,北見工業大学の駒井准教授および神戸大学の中山教授(本プロジェクト代表)とする.さらに,水温,塩分,溶存無機炭素(DIC)等に関する計測について,昨年度までは表層水のみの採水を行っていたが,2019年度は3次元的な分布も考慮するため,採水地点における水温,塩分,溶存酸素濃度(DO)の詳細な鉛直プロファイルの計測,および表層および底層の2地点における採水を実施する予定である.実施予定者は,神戸大学の中山教授,全分担研究者(岐阜大学の丸谷助教,港湾空港技術研究所の渡辺博士,および静岡大学の久保助教),および北見工業大学の駒井准教授である.コムケ湖における観測を,代表及び全分担者により実施することで,海外での観測となるLake Mongerでの観測を円滑に行うことができると考えている.また,コムケ湖においても,アマモが集中して存在することにより滞留時間が長くなり,その結果,アマモ場底層のDOが低くなり貧酸素水塊が発生している可能性がある.これまでの研究において未解明の現象であり,本観測によりその発生を確認できる可能性がある.
一方で,Lake Mongerでの観測では,サンプルの輸出入を行わず現地で計測できる項目のみを対象とし,水草群生地の空間分布や水草の存在密度などを計測する.また,水草群生地内外の溶存酸素濃度の分布や水温,および流速などの物理環境場も計測する.既に西オーストラリア大学のHipsey准教授により実施されている観測結果との比較を行うことにより,本研究成果の信頼性を確保できる予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年3月までに,分担者である岐阜大学の丸谷助教,静岡大学の久保助教,そして港湾空港技術研究所の渡辺氏と西オーストラリア大学を訪問し,観測を実施する予定であった.しかし,受け入れ担当の西オーストラリア大学のHipsey准教授の都合により翌年度以降に実施せざるを得なくなった.そのため,4人分のオーストラリア・パースへの旅費及び観測準備費用を含めて次年度使用額が生じることとなった.よって,2019年度に観測を計画している.
|