研究課題/領域番号 |
18KK0122
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
窪田 亜矢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (30323520)
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研究分担者 |
井本 佐保里 日本大学, 理工学部, 助教 (40514609)
本田 利器 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (60301248)
羽藤 英二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60304648)
大月 敏雄 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80282953)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 難民キャンプ / ホストコミュニティ / ケニア / 長期化難民状態 / スラム |
研究実績の概要 |
本研究「難民キャンプの持続可能な都市空間への転換に関する研究」では、中東問題や南スーダンでの紛争など難民が激増し続けているにもかかわらず、先進諸国が受け入れについて極めて消極的な態度になっていることで、アフリカや近辺の限られた国が大量に難民を受け入れざるを得ず、難民キャンプが長期化していることを背景にしている。研究の目的は、短期居住を想定して計画されるキャンプという空間のあり方に、実態調査によって再考の知見を得ることにある。ケニア は、アフリカ大陸の中では比較的安定した政治状態にあるが、東にソマリア、北に南スーダンがあり、ケニア 国内でも都市化の進んだ首都ナイロビと北方の牧畜を中心としたトゥルカナ地方がある。そのため、本研究の対象国として適した事例である。トゥルカナ地方にある難民キャンプ、ナイロビ郊外のスラム、トゥルカナ地方の北部にある難民キャンプ跡地、という三つのケースを対象にして、物理的な実測調査、空間の利用調査、難民へのインタビューによる空間整備の実態把握調査によって、難民という状態を空間の実態から明らかにする。また、シリアの紛争、イエメンの飢餓など、中東からヨーロッパに流入している難民の状態を理解するために、ギリシャの難民キャンプも調査対象としている。日本の難民研究はあまり進んでおらず、特に、社会学や政治学、哲学以外では遅れていて、空間計画からの研究はほとんどみられない。よって、本研究には独自性と先駆性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の特徴は、精密な現地調査にある。研究実施計画に示している通り、第一回(2019年3月)、第二回(2019年8月)では、ケニア・ナイロビにおけるカクマ難民キャンプ、ナイロビ郊外のスラム、かつて難民キャンプがあったロキチョゴなど、現地調査は予定通り進めることができた。、特にカクマ難民キャンプにおいては、南スーダン、ソマリア、ウガンダからの難民に協力を得て、難民キャンプの経年的変容の具体的内容やプロセス、難民自身による空間整備の実態を明らかにすることができた。さらに、そうした空間的な変化には、国籍・民族によって活用可能なネットワークに大きな差異があり、特に経済的な状況が大きく影響していることを明らかにできた。これらは、現在、国内外の投稿論文にすべく、とりまとめをしている。 第三回(2020年3月)は、カクマ難民キャンプやルワンダの難民キャンプでの現地調査に加えて、ナイロビ大学での合同研究会も予定していたが、新型コロナウィルスのために直前でキャンセルせざるを得ず、第四回(2020年8-9月)も中止となった。オンライン研究会で代替も図ったが、必ずしも現地調査で想定していた結果は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
前項の進捗状況に述べた通り、予定からは変更せざるを得ない。しかし第二回までの現地調査が予定よりも順調に進んでおり、データを収集することはできた。一方で、タイトルにも掲げている「持続可能」という状態と難民キャンプとの関係については、考察が深まっていない。そこで、今後は、短期的で緊急事態への対応として想定されていたキャンプが長期化している実態に即して、どのような状態が望ましいと考えて難民キャンプを計画すべきか、持続可能という言葉のままで良いのかどうかも含めて、結論に到達すべく議論を重ねる予定である。並行して、福島第一原子力発電所の水素爆発によって、帰還できていない、すなわち難民状態にある被災者の方々のインタビューや実態把握をすることで、難民状態の普遍的側面を明らかにすることも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
機器の故障、現地調査結果の図化作業などの経緯、英語論文の校正や投稿など、当初想定していなかった費用が生じた。
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