研究課題
本研究は、将来の深宇宙探査で求められる1~1000ミクロンオーダーの固体微粒子を1~1000m/sオーダーの速度で、真空中にて単発ずつ加速し、衝突現象をリアルタイムで観察できる実験機構群を、世界に先駆けて構築することが目的である。そのために、低速・高速・超高速の速度領域ごとに専用の固体微粒子加速機構を、日米に現存する実験装置を改良して構築することを目指している。第二年度末までに、日米双方での実験機構群の基本的構築は完了し、それぞれの質量・速度範囲での微粒子加速性能の検証実験、およびそれらを使った宇宙実証機会の運用と成果創出を、第三年度である2020年度に行う予定であった。しかし2020年初頭より現在まで、新型コロナのパンデミック流行により、日米両国間の相互訪問を前提とした、各実験機構群を用いた実験は全て延期を余儀なくされた。そこで、医療分野のコア技術を宇宙探査に世界で初めて応用する実績をつくり、本研究の当初目的を完遂させるためにも、本研究の最終年度を2021年度に延長する申請を行い、日本学術振興会より認めて頂いた。ゆえに2020年度には、共同研究者への予算配算は行ったものの、各研究機関の予算の大半は2021年度にコロナ禍が収まって実験出張できるようになるまで使用せず、保存して頂いた。一方、エアロゲルとカーボンナノチューブの宇宙実証機会である「たんぽぽ2」実験は、2019年夏から2020年秋まで国際宇宙ステーション上で一年間の宇宙曝露を行ったのち、2021年2月に申請者の研究室へサンプルリターンすることができた。これらは2021年度のコロナ禍下でも、国内で試料分析を行って、今回開発した実験機構群を使った校正実験による検証に備えることができる。
3: やや遅れている
本研究では、三か年度で以下の三本柱を実施することを目指してきた。(1)低速・高速・超高速専用の真空中での固体微粒子加速機構を、日米に現存する実験装置を改良することで構築する、(2)全機構に共通する検証用標的を日米それぞれに開発し、地上での校正実験を行う、(3)本期間中に打上げ予定の宇宙実験・探査計画に同じ標的を搭載し、宇宙での検証実験を行う。(1)と(2)のうち機器開発については、2019年度末までに当初予定を前倒して、おおむね実現できた。あとは各実験機構に関する性能評価・校正のための衝突実験を完遂すべきだが、2020年初頭より現在まで、新型コロナの世界的流行によって日米両国間の往来ができなくなり、全ての衝突実験が延期されたままである。(3)については、超高速度用捕集材「エアロゲル」と低中速度用捕集材「カーボンナノチューブ(CNT)」の宇宙実証試験を、2019年夏から2020年秋まで国際宇宙ステーションを使った「たんぽぽ2」プロジェクトとして実施したが、NASAによるカプセル回収の遅れにより、2021年2月に地球帰還した曝露試料が実験室に戻ってきた。それらの検証に関わる分析研究は2021年度に繰り越された。超高速衝突検出新素材「圧電繊維布材(Skin)」の宇宙実証試験は、2020年10月より国際宇宙ステーション上で開始できた。地球回収後の検証分析は2021年度後半以降になる。また超高速度用検出センサ「PVDF(CLOTH)」を搭載したエクレウス探査機のNASAによる打ち上げ予定は2021年度後半まで遅れたため、宇宙実証の実施はそれ以降となる。
本研究の最終年度を2021年度に延長することが承認されたので、2021年度中に新型コロナのパンデミックが収束して、日米両国の相互訪問が再開した場合には、過去1年半程度延期されてきた各実験機構に関する性能評価・校正衝突実験を、集中的に実施する。また、たんぽぽ2、SpaceSkin、エクレウスによって宇宙実証機会を得た各機器の検証および学術的成果創出も、2021年度に集中的に実施する。なおコロナ禍下でも、これまで通り日米チーム間では、隔週の定期連絡会議を継続的に開催し、交流再開後の校正実験の準備、過去の実証実験結果に基づく成果創出を、可能な限り行う。これらを通じて、医療分野のコア技術を宇宙探査に世界で初めて応用する実績をつくり、本研究の当初目的を2021年度中に完遂させることを目指す。ただし、コロナ禍下の状況により、2021年度中に延期されている実験等の作業を完遂することが難しくなる場合は、日米の共同研究者と諮り、できる限りの次善策を講じることとする。
2020年度はコロナ禍下のため、日米間の相互訪問による実験が全く実施できなかった。そこで当初予定された旅費等予算をほぼ全て温存し、2021年度に繰り延べた。共同研究者への予算配分は2020年度に行ったが、それらは2021年度の活動のために充てることとした。以上から、上記のような次年度使用額が生じた。2021年度にコロナ禍が解決し、日米相互訪問が可能になった段階で、2020年冬期から延期されている全ての実験を集中的に実施する。具体的には、日本側がMITへ赴いて行う実験は過去3回(約4週分のマシンタイム)、米国側がISAS等に赴いて行う実験は過去1回(約2週分のマシンタイム)を2021年度に補い、本研究を完遂する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 11件、 査読あり 11件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 10件、 招待講演 6件) 図書 (1件)
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