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2021 年度 実施状況報告書

インドネシア気象レーダ網観測の高精度化と衛星降雨推定手法開発への応用

研究課題

研究課題/領域番号 18KK0130
研究機関京都大学

研究代表者

重 尚一  京都大学, 理学研究科, 准教授 (60344264)

研究分担者 牛尾 知雄  大阪大学, 工学研究科, 教授 (50332961)
久保田 拓志  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門, 研究領域主幹 (90378927)
佐山 敬洋  京都大学, 防災研究所, 准教授 (70402930)
広瀬 民志  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 第一宇宙技術部門, 宇宙航空プロジェクト研究員 (80709296)
研究期間 (年度) 2018-10-09 – 2023-03-31
キーワード全球衛星降水マップ / インドネシア / 地上気象レーダ
研究実績の概要

インドネシア気象気候地球物理庁から提供を受けた地上気象レーダデータを用いた検証で、全球衛星降水マップ(GSMaP: Global Satellite Mapping of Precipitation)は強い鉛直シアー下で中下層の降水雲の移動方向をしばしば誤認していた。そこでブラジル宇宙機関(INPE)が開発した各降水クラスターを個別に追跡可能なトラッキング手法(ForTraCC)との比較検証を行った。降水雲の追跡精度に関してはForTraCCがGSMaPに比べて高いスコアを示しており、GSMaPの追跡手法の改善につながる結果が得られた。
熱帯大規模雲擾乱であるマッデン・ジュリアン振動通過時のインドネシア海洋大陸での降雨量アノマリー変化に着目して、高精度な熱帯降雨観測衛星搭載降雨レーダ(TRMM PR)の降雨量推定を真値として、GSMaPとTRMM Multi-Satellite Precipitation Analysis (TMPA) 3B42による降雨量推定の比較を行った。その結果、海域ではほぼ一致していたが、カリマンタン島やスマトラ島といった陸域ではGSMaPはTRMM PRと一致していたのに対し、多くの先行研究で利用されてきたTMPA 3B42は異なる降雨量アノマリー変化を示していることが分かった。
インドネシア・バンドンで実施された地上気象レーダ観測期間中(2017年3月~5月)に発生した2つの降雹事例を解析した。静止衛星ひまわり8号の衛星画像においても急激な積乱雲の発達が観測されたが、その位置はレーダ・エコーに対して約15km西側にずれていた。インドネシア・バンドンがひまわり8号の衛星直下点から離れていることに加え、積乱雲の雲頂高度が非常に高く、視差の影響が大きく出たためと推定し、静止衛星雲頂高度プロダクトを用いて視差補正を衛星画像に適用したところ解消した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナの影響でインドネシアを訪問できない状態が続いているが、日本国内で可能な研究を実施してGSMaP改良の様々な成果が得られている。また、インドネシア側共同研究者であるTrilaksono博士とのオンラインでの議論を通じて、インドネシア・バンドンにおける降雹事例の観測データを解析した結果、積乱雲の雲頂高度が非常に高いインドネシアでは、静止衛星ひまわり8号の衛星画像に視差の影響が大きく出ることが分かるなど、新たな知見が得られている。

今後の研究の推進方策

今年度実施した降水雲の追跡精度に関するForTraCCとの比較に基づき、GSMaPの追跡手法を改善していく。また、マッデン・ジュリアン振動通過時のインドネシア海洋大陸での降雨量アノマリーの変化に着目した比較には、米国航空宇宙局(NASA)がTMPA 3B42に代えて開発しているIntegrated Multi-satellitE Retrievals for GPM (IMERG)を加えるとともに、陸海での降雨量アノマリー変化の違いを説明できるよう研究を進めていく。TMPA 3B42を用いた先行研究は、マッデン・ジュリアン振動の対流活発期にボルネオ島など海洋大陸の陸域では、降水は強まらない、むしろ負の降雨量アノマリーを示すと報告した結果、マッデン・ジュリアン振動が海洋大陸を迂回するような経路を取ると広く考えられるようになっている。TRMM PRやGSMaPの降雨量推定では正の降雨量アノマリーを示しており、マッデン・ジュリアン振動に対する海洋大陸の影響を再検討していく。
インドネシア・バンドンで発生した降雹事例については、今後、数値シミュレーションも併用して、発生メカニズムを明らかにしていく。このような熱帯地域での降雹の発生は中高緯度の欧米諸国に比べて圧倒的に少なく、観測データもほとんどないため、発生メカニズムを明らかにすることは気象学的にも極めて重要であると考えている。
一方、GSMaPの利用研究として、広域の火災リスク推定を行っていく。このため、スマトラ島・カリマンタン島の沿岸付近を中心に、GSMaPから推定される無降雨日を、地上雨量データで比較・検証していく。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナの影響で2年以上にわたって実現できていないインドネシア共同研究者達との対面で交流を実施する。また、これまでの成果を論文化する。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 8件)

  • [国際共同研究] バンドン工科大学/インドネシア国立航空宇宙研究所/インドネシア気象気候地球物理庁(インドネシア)

    • 国名
      インドネシア
    • 外国機関名
      バンドン工科大学/インドネシア国立航空宇宙研究所/インドネシア気象気候地球物理庁
  • [雑誌論文] 衛星観測による全球降水マップの開発と社会での実利用推進― 2019年度岸保・立平賞受賞記念講演―2022

    • 著者名/発表者名
      青梨和正・久保田拓志
    • 雑誌名

      天気

      巻: 69 ページ: 183-195

    • 査読あり
  • [学会発表] マッデン・ジュリアン振動に伴う海洋大陸上での降水に関する再検討2022

    • 著者名/発表者名
      加藤ふみ、重尚一
    • 学会等名
      GPMおよび衛星シミュレータ合同研究集会
  • [学会発表] GSMaPヒストグラム補正導入後の影響検証2022

    • 著者名/発表者名
      広瀬民志、久保田拓志、妻鹿友昭、牛尾知雄
    • 学会等名
      GPMおよび衛星シミュレータ合同研究集会
  • [学会発表] A bias correction algorithm for the GSMaP in GEO IR observing areas2022

    • 著者名/発表者名
      Hirose. H., T. Tashima, T. Kubota, T. Mega, T. Ushio
    • 学会等名
      ISTS 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Climate Change Adaptations For Floods and Fire Risks in Humid Tropical River Basins2022

    • 著者名/発表者名
      Eva Yamamoto, Kodai Yamamoto, Takahiro Sayama, Apip
    • 学会等名
      IC ENSURES 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] マッデン・ジュリアン振動に伴う降水に対する海洋大陸の影響2021

    • 著者名/発表者名
      加藤ふみ、重尚一
    • 学会等名
      気象学会2021年度春季大会
  • [学会発表] ひまわり8号高解像度データで見られたインドネシア・バンドン降雹事例における積乱雲の特徴2021

    • 著者名/発表者名
      池田浩光、重尚一、青梨和正、広瀬民志、濱田篤、Nurjanna Joko Trilaksono、Rahma Yanti、Dinda Shabrina Medyani、Prawira Yudha Kombara
    • 学会等名
      気象学会2021年度秋季大会
  • [学会発表] GSMaPヒストグラム補正手法の改良2021

    • 著者名/発表者名
      広瀬民志、久保田拓志、田島知子、妻鹿友昭、牛尾知雄
    • 学会等名
      気象学会2021年度秋季大会
  • [学会発表] Improvement in the GSMaP histogram matching algorithm for middle and lower-level clouds2021

    • 著者名/発表者名
      Hirose. H., T. Tashima, T. Kubota, T. Mega, T. Ushio
    • 学会等名
      JpGU 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] Implementing histogram matching to reduce the accuracy difference in the satellite-born merged precipitation product2021

    • 著者名/発表者名
      Hirose. H., T. Tashima, T. Kubota, T. Mega, T. Ushio
    • 学会等名
      IGARSS 2021
    • 国際学会
  • [学会発表] A histogram matching method for GSMaP improvement in geostationary meteorological satellite obesrving areas2021

    • 著者名/発表者名
      Hirose. H., T. Tashima, T. Kubota, T. Mega, T. Ushio
    • 学会等名
      AOMSUC-11
    • 国際学会
  • [学会発表] Characteristics of Hail-Producing Convection in Bandung, Indonesia as Derived from Himawari-8 High Resolution Data2021

    • 著者名/発表者名
      Ikeda, H., S. Shige, K. Aonashi, H. Hirose, A. Hamada, N. J. Trilaksono, R. Yanti, D. S. Medyani, P. Y. Kombara
    • 学会等名
      LAPAN - Kyoto University International Symposium for Equatorial Atmosphere
    • 国際学会
  • [学会発表] Characteristics of Hail-Producing Convection in Bandung, Indonesia as Derived from Himawari-8 High Resolution Data2021

    • 著者名/発表者名
      Ikeda, H., S. Shige, K. Aonashi, H. Hirose, A. Hamada, N. J. Trilaksono, R. Yanti, D. S. Medyani, P. Y. Kombara
    • 学会等名
      Student and Early Career Scientist Conference on Topics in Severe Local Storms
    • 国際学会
  • [学会発表] Understanding floods and fires risks in tropical peatlands as part of humid tropical river basins using SMAP and Sentinel-1 data2021

    • 著者名/発表者名
      Eva Yamamoto, Kodai Yamamoto, Takahiro Sayama, Mariko Ogawa, Osmu Kozan
    • 学会等名
      AGU Fall Meeting
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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