研究課題/領域番号 |
18KK0141
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤井 稔 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00273798)
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研究分担者 |
杉本 泰 神戸大学, 工学研究科, 准教授 (40793998)
加納 伸也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (20734198)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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キーワード | シリコン / 量子ドット / ナノ粒子 / Mie共鳴 |
研究実績の概要 |
当初は,研究代表者のグループが開発してきたホウ素とリンを同時ドーピングしたシリコンナノ結晶(量子ドット)のバイオフォトニクス及び光化学分野への応用展開の実証に関する研究を主に実施してきたが,昨年度からは、研究の軸足を直径100nm程度の比較的大きいナノ粒子に移した。具体的には、以下の研究を実施した。 (1)シリコン量子ドット塗布膜のリチウムイオン電池電極への応用の検討を行った。ニッケル箔上に量子ドット塗布薄膜を形成し、充放電特性、安定性、充放電後のナノ粒子の構造評価等を行い電極としての特性を評価したところ、ドーピングしないナノ粒子に比べて安定性が向上することが明らかになった。得られた結果について論文を執筆中である。 (2)シリコン量子ドットと2次元半導体である単層二硫化モリブデンの間の電荷移動について研究を行った。シリコン量子ドットと単層硫化モリブデンの複合構造の発光特性について詳細に調べた結果、電荷移動の方向がシリコン量子ドットのサイズに依存することが明らかになった。得られた結果は、The Journal of Physical Chemistry誌に発表した. (3)Northwestern大学のグループと共同で、シリコンナノ粒子と二硫化モリブデンのシェルからなるコアシェルナノ粒子の形成と光学特性に関する研究を行った。その結果、二硫化モリブデンの電子遷移とシリコンナノ粒子のMie共鳴の結合を観測することができた。得られた結果は、Small誌に発表した. (4)スタンフォード大学のグループと共同で、シリコンナノ粒子と二硫化モリブデン薄膜からなる複合構造の光学特性について研究を行った。その結果、シリコンナノ粒子が二次元材料に対する高効率なナノアンテナとして機能することを見出した。得られた結果は、ACS Photonics誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により長期間に渡って相互訪問ができず,研究代表者のグループで開発した全無機シリコン量子ドットのバイオ応用及び光化学分野への応用展開に関しては日本側で研究がほぼ終了した.一方,Mie共鳴を示すシリコンナノ粒子に関しては国際共同研究が非常に順調に進んでおり,Stanford大学,デンマーク工科大学のグループと国際共著論文を発表した.2022年の国際共著論文数は5編となっている.
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今後の研究の推進方策 |
UC San DiegoのM. Sailor教授のグループが中心となって推進しているシリコンナノ材料のバイオ応用に関するコンソーシアムのメンバー(主にUSAのグループ,カナダ,イタリア,韓国のグループが准メンバーとして加わっている)と交流を進めるが,より順調に国際共同研究が進んでいるMie共鳴を示すシリコンナノ粒子について重点的に研究を行う.具体的には以下の研究を検討している. (1) 研究室に滞在しているドイツ人ポスドクと共同で,シリコンナノ粒子配列構造かならる動的制御可能なキラルメタサーフェスの開発を行う. (2) 今年度に招へい予定のイラン人研究者と共同で,Mie共鳴シリコンナノ粒子の複合構造の光学応答についてシミュレーションを行い,有用な機能を有する構造を探索する. (3) Fribourg大学(スイス)のグループと共同で,DNAを用いてシリコンナノ粒子複合構造を制御して形成する技術を開発する. (4) スウェーデン王立工科大学と共同で,Mie共鳴シリコンナノ粒子をセルロースに埋め込んだ複合構造を開発する.
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次年度使用額が生じた理由 |
残額はごくわずかで,消耗品購入のタイミングの問題で発生したものであり,R5年度に使用する.
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