研究課題/領域番号 |
18KK0142
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高藤 誠 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50332086)
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研究分担者 |
龍 直哉 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究主任 (90743641)
伊原 博隆 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 特任教授 (10151648)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | ナノ・マイクロ粒子 / ディンプル構造 / 閉鎖性空間 / コアシェル微粒子 |
研究実績の概要 |
本研究では、マイクロ粒子界面にナノ・サブミクロンサイズの閉鎖性ポッド空間へのナノ粒子や巨大分子の格納、保持、放出挙動ならびにポッド空間内部の物質拡散性や反応性の解明、ならびにポッド内部の空間構造、界面構造の制御による特異的環境場を創出を目指した研究開発を実施している。今年度は、界面に100ナノから1ミクロンの閉鎖性ポッドをもつマイクロ粒子を作製し、ポッド空間内部の機能を評価するために、(1)無機ナノ粒子の取込み(格納)、(2)蛍光色素分子のトラップ(吸着)について検討した。その結果、閉鎖性ポッドは内部に蛍光性色素分子を取り込むことが可能であり、またポッドサイズより小さいサイズのナノ粒子を格納できることを確認した。若手研究者をボルドー大学(フランス)に派遣し、ポッド空間内部の評価法や機能化法に関する議論を行っている。さらに今年度から、ポッド空間内部に埋め込むための機能性マイクロ粒子の合成に着手し、単分散かつ赤外反射機能や発光機能をもつ新規な機能性粒子の合成にも成功した。 今年度の研究成果は、国際学術誌に1報掲載済みであり、招待講演2件を含む4件の国際学術会議における講演・発表、また2件国内学会における発表を行った。3件の発表は、若手研究者、大学院生によるものである。今後は、マイクロ粒子をキャリアや固定相とし、ポッド空間内部に格納した物質の担持、運搬機能を活用した機能性材料の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、界面に100ナノから1ミクロンの閉鎖性ポッドをもつマイクロ粒子を作製するとともに、ポッド空間内部の機能を評価するために、(1)無機ナノ粒子の取込み(格納)、(2)蛍光色素分子のトラップ(吸着)について検討した。ナノシリカを分散させた重合性モノマー中の懸濁重合により、界面にナノシリカを固定化したポリマーマイクロ粒子を作製し、フッ酸処理することでナノシリカを溶解除去し、界面ナノポッドを作製した。ナノシリカのサイズや添加量を変えることで、界面ポッドのサイズや充填密度の制御が可能であることを確認した。ナノシリカのサイズだけでなく、埋り込み深さを制御することにより、ポッドの空間内部の構造を制御可能である。ナノシリカが界面により深く埋り込んだポリマー粒子を作製することで、ポッド内部はより閉鎖性の高い空間になる。 界面ポッド構造をもつマイクロ粒子にナノシリカを加え、振り混ぜることで、ポッド空間内部へのナノシリカの取込みについて検討した結果、ポッド開口部(ゲート)のサイズより小さいサイズのナノシリカが界面ポッド空間に充填されることが確認された。サイズの大きいナノシリカは充填されないことから、ポッド空間はナノサイズの粒子を取り込むことが可能であり、サイズ選択性があることを確認した。また、マイクロ粒子を蛍光性色素水溶液中に含浸させた結果、ポッド空間内部に蛍光性色素分子が取り込まれていることが確認された。蛍光顕微鏡で観察した結果、マイクロ粒子の外表面には蛍光が観察されないことから、ポッド内部の空間は外表面とは異なる特性を持っていることが示唆された。 また、ポッド空間内部に埋め込むための機能性マイクロ粒子の合成に着手し、単分散かつ赤外反射機能や発光機能をもつポリマーマイクロ粒子の合成に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ポリマー微粒子の外部環境とは異なる環境をポリマー微粒子界面のポッド空間に創出させるため、ポッド内表面の化学修飾について検討する。ポッド内表面にイオン性基や疎水性基を導入するためのナノ薄膜層形成のための技術開発、分析法については、海外共同研究者であるフランス国立科学研究センター(ボルドー大学、フランス)のR. Oda博士と共同して開拓を行う計画である。ポッド空間内部へのナノサイズ、分子サイズの物質の取込みについて検討するとともに、格納後の保持・放出挙動の調査をするため、ポッド内部の分子のモビリティ評価、物質の拡散性・流動性に関して、固体NMR測定、2次元NMR測定により解析を行い、ポッド内部に格納した物質の保護効果を評価する。さらに、物質の格納・放出を可能にするため、外部刺激応答型のポリマーネットワークハイドロゲルを利用したゲートキャッピング技術の開発を試みる。 さらに、ポッド内部空間に格納するための機能性ナノ粒子の開発を進める。空間内部を積極的に機能化することで、マイクロ粒子をキャリアや固定相とする機能性材料の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に、研究代表者および共同研究者(若手研究員)が共同研究相手国を訪問予定であったが、当初の予定を変更せざるを得ない状況となり、次年度に訪問日程を変更したため、次年度使用額が生じた。次年度に先方を訪問するための旅費として使用する計画である。
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