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2020 年度 実施状況報告書

天然物立体異性体を用いる植物ホルモン活性制御

研究課題

研究課題/領域番号 18KK0162
研究機関東北大学

研究代表者

上田 実  東北大学, 理学研究科, 教授 (60265931)

研究分担者 岡田 憲典  東京大学, 生物生産工学研究センター, 准教授 (20312241)
高岡 洋輔  東北大学, 理学研究科, 准教授 (80599762)
宮本 皓司  帝京大学, 理工学部, 講師 (90721514)
加治 拓哉  東北大学, 理学研究科, 助教 (80835520)
研究期間 (年度) 2019-02-07 – 2022-03-31
キーワードジャスモン酸 / コロナチン / 化学プローブ / 受容体 / 標的選択性
研究実績の概要

ジャスモン酸イソロイシン(JA-Ile)は、植物の病原菌感染や虫による食害への防御応答、二次代謝産物生合成活性化など、魅力的な作用をもつ植物ホルモンである。しかしJA-Ileは、これらに伴い植物の生長抑制という深刻な副作用をもち、有用作用の選択的活性化が望まれる。JA-Ileが多様な活性を示す理由は、ユニークなCOI1-JAZ共受容体に重篤な遺伝的冗長性が見られることにある。
本研究では、植物ホルモン JA-Ileの構造的・機能的ミミックである天然物コロナチン(COR)をツールとして用い、目的の生物応答に関与するCOI1-JAZ共受容体ペアを選択的に活性化する普遍的方法論を構築する。研究代表者は最近、COR立体異性体をベースに、JAZ9/10選択的にCOI1との相互作用を誘導するリガンドNOPhを論理的設計によって開発した(Nat. Commun. 2018, 9, 3654)。これにより、副作用の生長阻害を伴わずに病原菌感染耐性のみを活性化することに初めて成功した。天然物ケミカルバイオロジーによってJA-Ileの作用-副作用トレードオフ現象を解決できたことで、遺伝的冗長性に関する問題の解決に道を拓いた。しかし、JAZ9/10以外のサブタイプに選択的なリガンドの開発には至らず、より強力な病原菌耐性獲得、その他の有用活性(虫害耐性や二次代謝産物生合成)の利用と解明には、13種いずれのJAZサブタイプに対してもCOI1との相互作用を選択的に誘導できる網羅的方法論が必要である。世界的に見ても、多くの研究者が植物ホルモン受容体サブタイプの網羅的機能解明を目指しているが、未だ成功例はない。これまでの成果を発展させ、植物ホルモン受容体の遺伝的冗長性問題に、世界に先駆けて最終的な解決を与える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

天然物立体異性体ライブラリーを構築し、シロイヌナズナ、トマト、イネにおいて、受容体サブタイプに選択性の高いリガンドのスクリーニングに成功した。その中には、特定の生物応答を活性化する分子も含まれており、遺伝的に冗長な系の解析に天然物立体異性体ライブラリーが有効であることを示すことが出来た。

今後の研究の推進方策

天然物立体異性体ライブラリーを構築し、遺伝的に冗長な系の解析に天然物立体異性体ライブラリーが有効であることを示すことが出来たので、今後は遺伝子発現を網羅的に解析する。特にRNAsequence法によるトランスクリプトーム解析は有効な手法であり、現在、シロイヌナズナの系において、特定の受容体サブタイプを活性化するリガンドを用いる解析が進行中である。また今後は、手持ちの分子を基軸として、標的親和性のチューニングを試みたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍の影響を受け、海外研究機関がロックダウンされ、研究活動がストップした期間があった。また、海外研究機関での共同実験の実施ならびに共同研究打ち合わせが不可能になったので、次年度への予算の繰越しを行い、研究期間の延長を申請した。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Syntheses of dinor-cis/iso-12-oxo-phytodienoic acid (dn-cis/iso-OPDAs), ancestral jasmonate phytohormones of the bryophyte Marchantia polymorpha L., and their catabolites2021

    • 著者名/発表者名
      Wang Jianxin、Sakurai Haruka、Kato Nobuki、Kaji Takuya、Ueda Minoru
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: 2033

    • DOI

      10.1038/s41598-021-81575-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Hoechst-tagged Fluorescein Diacetate for the Fluorescence Imaging-based Assessment of Stomatal Dynamics in Arabidopsis thaliana2020

    • 著者名/発表者名
      Takaoka Yousuke、Miyagawa Saki、Nakamura Akinobu、Egoshi Syusuke、Tsukiji Shinya、Ueda Minoru
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 5333

    • DOI

      10.1038/s41598-020-62239-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A scalable synthesis of (+)‐coronafacic acid2020

    • 著者名/発表者名
      Kato Nobuki、Miyagawa Saki、Nomoto Haruna、Nakayama Misuzu、Iwashita Makoto、Ueda Minoru
    • 雑誌名

      Chirality

      巻: 32 ページ: 423~430

    • DOI

      10.1002/chir.23172

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stereoselective Syntheses of all the Possible Stereoisomers of Coronafacic Acid2020

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Raku、Kato Nobuki、Hayashi Kengo、Tozawa Sho、Ogura Yusuke、Kuwahara Shigefumi、Ueda Minoru
    • 雑誌名

      ChemistryOpen

      巻: 9 ページ: 1008~1017

    • DOI

      10.1002/open.202000210

    • 査読あり

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公開日: 2021-12-27  

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