研究課題/領域番号 |
18KK0164
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
杉本 直己 甲南大学, 先端生命工学研究所, 教授 (60206430)
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研究分担者 |
TENG Ye 甲南大学, 先端生命工学研究所, 博士研究員 (00830621) [辞退]
建石 寿枝 甲南大学, 先端生命工学研究所, 講師 (20593495)
高橋 俊太郎 甲南大学, 先端生命工学研究所, 講師 (40456257)
遠藤 玉樹 甲南大学, 先端生命工学研究所, 准教授 (90550236)
GHOSH SAPTARSHI 甲南大学, 先端生命工学研究所, 博士研究員 (40840781)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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キーワード | 非標準核酸構造 / 熱力学 / 結晶構造解析 / NMR |
研究実績の概要 |
本研究では、非標準核酸構造の安定性と立体構造を細胞内環境で解析し、非標準核酸構造による遺伝子発現制御機構を分子レベルで解明することを目的としている。2018年度はまず、細胞内環境で遺伝子発現制御する非標準構造のエネルギーパラメータの測定を開始した。研究分担者の建石とTengが中心となり、ヒトのDNA配列からがんや神経疾患に関連する非標準構造を対象に、化学的環境変化への応答を解析した。紫外可視吸光度測定と円二色性測定から熱力学的安定性や核酸構造を解析することで、共存溶質、pH、イオン濃度などの化学環境の変化による非標準核酸構造の安定化エネルギーの変化を定量的に得た。また、細胞内のような分子で混み合った環境を模倣すると考えられる分子結晶内での構造解析の条件検討を開始した。そのために、ヒトのがん遺伝子の一種であるVEGF遺伝子のプロモーター領域の配列が形成する非標準核酸構造の1つであるi-motifについて、結晶化の検討を研究分担者の高橋がイギリスReading大学で開始した。さらに、細胞内での非標準核酸構造を実測するための準備として、研究代表者の杉本がチェコMasaryk大学に訪問し、分担者の建石が行った細胞実験のデータを基に細胞内NMR測定の予備的検討と、今後の測定における 細かな実験条件の打ち合わせを行った。細胞・個体レベルでの非標準核酸構造の機能制御の研究にも着手し、研究分担者の遠藤が中国南京農業大学に出向いてイネの組織毎のRNAを取得し、イネの発生や分化、組織形成などの各成長段階において変動する非標準核酸構造の解析を開始した。 国際交流として、イギリス、チェコ、中国それぞれにおいて学会あるいはセミナー形式で研究発表も行い、さらなる国際共同研究の可能性を拡げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、国際共同研究先の各所(イギリス、チェコ、中国)に訪問滞在し、共同研究を開始した。国内での核酸構造のエネルギーパラメータ解析も着実に進んでおり、研究が順調に進展している。また、研究分担者であるTengは2019年度から自国(中国)での就職が内定したため、2018年度途中での本事業の参加を辞退した。そのため、研究代表者と所属を共にするGhosh博士研究員が代わりに本事業に参加した。研究の引き継ぎは滞りなく行うことができ、本事業の進捗に影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、前年度に引き続き共存溶質、pH、イオン濃度などの化学環境の変化による非標準核酸構造の安定化エネルギーの変化(ΔG)についてのデータを蓄積する。さらに、複製・転写・翻訳などの遺伝子発現反応の相関を解析する。これらの遺伝子発現の反応効率から反応の活性化自由エネルギー(ΔG‡)を算出し、安定化エネルギーとの相関を検討する。分子クラウディング環境での精密立体構造解析についてはイギリスReading大学のグループと連携し、放射光CD(srCD)およびX線結晶構造解析を用いて解析する。細胞内構造解析についてはチェコMasaryk大学のグループと連携し、in cell NMR法による異なる由来の細胞内構造解析も行う。これらの構造解析研究から、細胞内の分子環境の違いに依存した非標準核酸構造の変化を明らかにし、非標準核酸構造が細胞内で複製・転写・翻訳を制御するメカニズムを解析する。イネの発生や分化、組織形成などの各成長段階に関わる非標準核酸構造の影響についても、中国南京農業大学との共同研究により引き続き推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた研究分担者である建石のチェコMasaryk大学訪問は、先方の都合により2018年度が取りやめになった。予定していた旅費は実験用消耗品として使用したが、一部繰越金が発生した。繰越金は次年度以降の国際共同研究のための旅費等で使用する。
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