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2021 年度 実施状況報告書

鳥類をモデルとした食性の多様化と味覚受容体の機能との関連

研究課題

研究課題/領域番号 18KK0166
研究機関明治大学

研究代表者

石丸 喜朗  明治大学, 農学部, 専任准教授 (10451840)

研究分担者 戸田 安香  明治大学, 農学部, 特任講師 (10802978)
三坂 巧  東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (40373196)
研究期間 (年度) 2018-10-09 – 2023-03-31
キーワード味覚受容体 / GPCR / 食性 / 鳥類
研究実績の概要

味覚は食物を選択する上で重要な役割を果たす。口腔内には、甘味・旨味・苦味・酸味・塩味の基本五味にそれぞれ対応した味センサー(味覚受容体)が存在する。近年、味覚受容体のレパートリーや機能が動物の食性と深く関わっていることが分かってきた。例えば、肉食恐竜を祖先とする鳥類は、甘味を感じるセンサー(甘味受容体、T1R2/T1R3)を失っている。一方、本研究グループは、花の蜜を主食とするハチドリでは、ヒトが昆布だしや鰹だしの旨味を感じるセンサー(旨味受容体、T1R1/T1R3)の機能が変化し、糖を感知する能力を獲得していることを明らかにした(Baldwin*, Toda* et al, Science, 2014)。しかし、ハチドリは近縁種のアマツバメと分岐した後に糖受容能を獲得したため、ハチドリ以外の鳥類が花蜜の味をどう検出しているかは不明であった。
そこで、本研究課題では、鳥類最大の種数を誇るスズメ目を対象に研究を行った。その結果、スズメ亜目に属する鳥類では、花蜜以外を主食とする鳥類も食糧源として花蜜を多く利用していることが分かった。また、旨味受容体の機能を解析したところ、スズメ亜目では花蜜食の鳥類に加え、メジロ(雑食)、ヒヨドリ(果実食)、カナリア(穀物食)など多様な食性の鳥類の旨味受容体が糖に応答した。さらに、祖先型の旨味受容体を復元し、機能を調べた結果、スズメ亜目鳥類の祖先が、ハチドリとは異なる分子機構で糖受容能を獲得したことが明らかになった。以上の結果から、祖先に生じた旨味受容体の遺伝子変異によって、長距離移動(渡り)時や主食が不足する季節に重要な食糧源として花蜜を利用するようになり、スズメ亜目が鳥類最大のグループへと繁栄するのに貢献したと示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

スズメ目鳥類を対象とした研究成果を原著論文としてまとめ、Science誌に掲載された。

今後の研究の推進方策

対象とする鳥類の種類をさらに広げ、鳥類における旨味受容体の機能と食性の関わりの全貌を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた共同研究先への渡航が延期となった。また、消耗品の節約に努めたところ、次年度使用額が生じた。次年度は旅費や消耗品として使用することを計画している。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Max Planck Institute for Ornithology(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Max Planck Institute for Ornithology
  • [雑誌論文] Synergism, Bifunctionality, and the Evolution of a Gradual Sensory Trade-off in Hummingbird Taste Receptors2022

    • 著者名/発表者名
      Cockburn G, Ko MC, Sadanandan KR, Miller ET, Nakagita T, Monte A, Cho S, Roura E, Toda Y, Baldwin MW.
    • 雑誌名

      Mol Biol Evol

      巻: 39 ページ: msab367

    • DOI

      10.1093/molbev/msab367

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Early origin of sweet perception in the songbird radiation2021

    • 著者名/発表者名
      Toda Y, Ko MC, Liang Q, Miller ET, Rico-Guevara A, Nakagita T, Sakakibara A, Uemura K, Sackton T, Hayakawa T, Sin SYW, Ishimaru Y, Misaka T, Oteiza P, Crall J, Edwards SV, Buttemer W, Matsumura S, Baldwin MW.
    • 雑誌名

      Science

      巻: 373 ページ: 226-231

    • DOI

      10.1126/science.abf6505

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 霊長類における旨味受容体のヌクレオチド感受性と食性の関わり2022

    • 著者名/発表者名
      戸田 安香、早川 卓志、糸井川 壮大、栗原 洋介、中北 智哉、Amanda Melin、河村 正二、今井 啓雄、石丸 喜朗、三坂 巧
    • 学会等名
      日本農芸化学会2022年度大会
  • [学会発表] コイ苦味受容体T2Rの機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      浅岡 亮太、清水 駿希、中北 智哉、戸田 安香、石丸 喜朗
    • 学会等名
      日本農芸化学会2022年度大会
  • [学会発表] 小腸刷子細胞に発現するGprc5c受容体欠損マウスの免疫系における表現型解析2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木 遼、中北 智哉、戸田 安香、石丸 喜朗
    • 学会等名
      日本農芸化学会2022年度大会
  • [学会発表] 塩味受容に関与する新規分子の同定2022

    • 著者名/発表者名
      成川 真隆、笠原 洋一、石丸 喜朗、三坂 巧、阿部 啓子、朝倉 富子
    • 学会等名
      日本農芸化学会2022年度大会
  • [学会発表] 霊長類におけるグルタミン酸の旨味受容と食物の関わり2021

    • 著者名/発表者名
      戸田 安香、石丸 喜朗、三坂 巧
    • 学会等名
      第75回日本人類学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] T1R受容体の機能と食性の関わり2021

    • 著者名/発表者名
      戸田 安香
    • 学会等名
      第5回感覚フロンティア研究会シンポジウム
    • 招待講演
  • [備考] 明治大学農学部農芸化学科食品機能化学研究室

    • URL

      https://meiji-agrichem.jp/professor/p_ishimaru/

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公開日: 2022-12-28  

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