研究課題/領域番号 |
18KK0168
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
中山 達哉 国立医薬品食品衛生研究所, 食品衛生管理部, 主任研究官 (80552158)
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研究分担者 |
山本 詩織 国立医薬品食品衛生研究所, 食品衛生管理部, 研究助手 (40795291)
陳内 理生 神奈川県衛生研究所, 微生物部, 主任研究員 (70622752)
山口 貴弘 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (80553635)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | ベトナム食品 / 鶏肉 / 魚介類 / セレウス菌 / 薬剤耐性大腸菌 / ESBL産生大腸菌 / カルバペネム耐性大腸菌 / カルバペネム耐性肺炎桿菌 |
研究実績の概要 |
2020年3月にベトナム、ホーチミン市に行き、MTA締結をした鶏肉由来の分離菌(カンピロバクター、リステリア及び薬剤耐性大腸菌)約400株を持ち帰ると同時に、ベトナム滞在時に購入したベトナム産魚介類を、日本で耐性菌研究を進めるために持ち帰った。カンピロバクター及びリステリア菌に関しては、日本で再度同定を行った結果、両菌株ともに違う菌であることが判明した。特にリステリア菌では、その多くがセレウス菌であることが判明した。 分離セレウス菌の分子系統解析を行った結果、全てのセレウス菌において、panC遺伝子によるPhylogenetic groupでは3型を示し、また、ハウスキーピング遺伝子によるMLST解析ではST205 complexであることが判明した。ST205 complexは中国や台湾から分離報告があることから、地理的に近いベトナムにおいても同型が多く分離されるものと思われる。また、毒素遺伝子を解析した結果、およそ半数でセレウリド関連遺伝子(ces)が検出されたことから、セレウリド毒素産生型セレウス菌に注意が必要であることが判明した。ベトナムにおけるセレウス菌の報告は皆無であるが、本結果はセレウス菌がベトナムの鶏肉で蔓延化している可能性を示すものであり、今後ベトナム鶏肉におけるセレウス菌の実態調査は必要であると考えられる。 加えて、ベトナム産魚介類から、ビブリオ菌、アエロモナス菌、ESBL産生腸内細菌科菌群及びカルバペネム耐性腸内細菌科菌群を分離・同定した。さらに、生化学性状解析、薬剤遺伝子解析を現在行っているところであるが、ベトナム魚介類からNDM-1、NDM-5遺伝子保有のカルバペネム耐性大腸菌及び肺炎桿菌も分離されていることから、今後の解析結果は注目される所である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、新型コロナウイルスが世界的大流行にて、ベトナム渡航はできない状況である。それゆえ2020年4月から2021年3月においては一度も渡航できていないために、現地での活動は行えておらず、当初計画していた研究計画を大幅に見直している。しかしながら、2020年3月に渡航した際に、2019年に鶏肉由来分離株、さらにベトナム産魚介類を購入し日本に持ち帰ったことで、これらの検体の分離同定、解析を進めている。コロナ禍により研究計画は変更を余儀なくされたが、それを補うだけの新たな結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度、新型コロナウイルスの大流行により、ベトナム渡航はできていない。加えて現在においても新型コロナウイルスによる感染者数の増加により、ベトナム渡航への見通しは立っていない状況である。そこで、今後の研究計画として、2020年3月に持ち帰った鶏肉分離菌株及びベトナム産魚介類由来ビブリオ、アエロモナス、ESBL産生腸内細菌科菌群及びカルバペネム耐性腸内細菌科菌群の分離同定、性状解析、遺伝子解析を継続して進める。加えて、プラスミド性薬剤耐性を示す分離菌において、多剤耐性もしくは報告例が少ない耐性遺伝子が検出された分離菌においては次世代シーケンサーによる全ゲノム及びプラスミド解析を行い、これらの結果をまとめて論文投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的大流行により、ベトナム渡航ができなかったため、計画通りの予算執行ができなかった。ベトナム渡航が可能になれば、渡航費、現地活動費として執行する予定である。もし、渡航ができない場合、ゲノム解析費用として執行する予定である。
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