研究課題/領域番号 |
18KK0169
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 洋一郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (50463881)
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研究分担者 |
中島 大賢 北海道大学, 農学研究院, 助教 (70710945)
深野 祐也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70713535)
藤田 大輔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (80721274)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 直播稲作 |
研究実績の概要 |
まず、熱帯アジアのイネ育種に関する共同研究の展開では、IR64(BPH1, BPH37)を遺伝的背景に保有するトビイロウンカ抵抗性遺伝子に関する準同質遺伝子系統群を作成した。BC3F2集団の中から、トビイロウンカ抵抗性遺伝子(BPH3とBPH17, BPH17-ptb, BPH20, BPH32)をそれぞれホモ型で保有する個体を選抜した。また、複数の抵抗性遺伝子を保有する集積系統を育成するために、集積可能な組み合わせに関して交雑した。さらに、BPH17の有無を確認するために、BPH17と関連性が報告されているIndelマーカーを用いて抵抗性遺伝子の有無を確認した。また、不良環境天水田における直播稲作の共同研究では、フィリピンにおいて深播き栽培技術に関する試験のデータ解析を完了した。その結果、深播きでの出芽率が高かった(30%以上)場合は収量が深播きでも低下しないか減収程度が小さいが、それ以外の場合は減収が大きい(最大で55%減)ことが明らかとなった。深播き技術の確立には苗立ち確保のための適正品種の選定が重要であることが示された。さらに、直播水田の作付体系高度化に向けた研究展開では、乾季のトウモロコシ栽培に着目して研究を進めた。フィリピン現地での聞き取り調査から、施肥体系と潅水時期の最適化がイネートウモロコシ輪作体系における栽培学的課題の一つとして浮き彫りとなった。そこで、分施および潅水様式が異なる条件でポット試験を実施し、基肥施与の有無と潅水遅延の影響がトウモロコシの生育に及ぼす影響を検討した。その結果、初期潅水を遅延させ、潅水回数を減らしても初期生育は維持されること、また、基肥窒素を低減することで根系が発達し、潅水前後の蒸散速度および光合成速度が多肥条件下に比べて高く推移することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍において、熱帯アジアのいくつかの国では、ロックダウンによる厳しい外出制限がかけられている地域もある。オンラインによる共同研究展開には限界があり、不良環境の直播稲作地帯への現地調査や現地試験に制限が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
熱帯アジアの不良環境地帯の乾田・湛水直播稲作におけるイネ生産性安定化に向けて、土質・播種期・耕起整地方法によって変異が生じる土壌水分や土壌硬度に応じた播種技術の同定と播種に関するガイドライン作り向けた共同研究を進めていく。更に、直播イネで問題となる雑草害に対して、雑草防除ガイドライン作りを目指して、雑草生理生態の共同研究体制づくりを進める。また、引き続き、直播水田輪作体系の高度化に向け、乾季のトウモロコシ栽培の生産性改善に向けた共同研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
過年度より、熱帯現地での研究の一部については、充分な人数の技術協力者が必ずしも得られない場合が散見され、労力(人手)不足がフィールドワークにおけるボトルネッ クとなる問題に時折直面していた。この点、プロジェクト後半では、ネットワークをより強固にしてこのような人的資源不足を解消する予定であったが、コロナ禍でこの点に進捗が見られず、むしろ悪化傾向にある。これはいくつかの国では、ロックダウンによる厳しい外出制限がかけられている地域があるためである。オンラインによる共同研究展開には限界があり、コロナ禍の状況が回復するまでは不良環境の直播稲作地帯への現地調査や現地試験に一定の制限が生じることが予想される。
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