研究課題
【研究の目的】野生ソバ(Fagopyrum esculentum ssp. ancestrale)は雲南省を中心とする中国南部にのみ自生し、栽培ソバ(F. esculentumssp. esculentum)と交配可能な重要な植物遺伝資源である。しかし世界のどこにも野生ソバ遺伝資源は構築されておらず、中国の急速な発展とともにその遺伝資源は失われようとしている。そこで本研究では共同研究先の雲南農業大学(YAU)において野生ソバを中心としたソバ遺伝資源の維持管理システムを構築する。また、遺伝資源に含まれる野生および栽培ソバの全ゲノム配列決定から、ソバの栽培化に関与した育種上重要な遺伝子群を網羅的に同定し、最終的にソバの栽培化プロセスを解明する。このような学術的かつ応用的にもインパクトの高い成果を挙げることにより、YAUでのソバ遺伝資源研究の拠点形成と強化を図る。【本年度の成果】本年度はYAUにおいて、①栽培ソバと野生ソバのF2作成、②既存遺伝資源の確認と栽培実験、③栽培および野生ソバのDNA抽出とNGS解析を実施した。これらの実験はすべてYAUの学生とスタッフと共に実施し、YAUにおけるソバ研究拠点の基盤を確立できた。また、日本から3名、YAUから1名、およびケンブリッジ大学(イギリス)から1名の研究者からなる野生ソバ調査隊を組織し、雲南省の野生ソバおよびその他のFagopyrum属植物の探索を行った。さらに京都府立大学の学内競争的資金を利用することにより、YAUから2人のスタッフを日本に招き、京都府立大学で合同セミナーを実施した。
2: おおむね順調に進展している
YAUでの分子実験と交配実験を実施し、予定通りの成果を上げることができた。NGSによる野生種のデータ取得もほぼ終了し、順調である。また、3カ国の共同調査隊では、野生ソバ以外のFagopyrum属植物の収集にも成功した。収集植物の中でも、自殖性を有する野生ソバ (f. homotropicum) は今後の遺伝子育種学的研究の重要な材料となる。さらに中国雲南省の現地での学術交流のみでなく、京都府立大学へYAUのスタッフを招聘することもでき、二国間での研究者の連携をさらに深化させることができた。また、ケンブリッジ大学との交流も実施しており、満足できる成果を残すことができたと考えている。
本年度は栽培および野生ソバのNGS解析を実施し、さらにF2の表現型解析と遺伝子型解析を実施する。また、本年度も中国での野生ソバ調査を実施し、遺伝資源の拡充を行う。
2020年2月に次年度のNGS解析を実施する予定であったが、コロナウイルスのパンデミックにより雲南農業大学での実施が不可能であった。現在、YAUのスタッフとインターネットやWechatで連絡が取れており、本年度に予定通りにNGS解析の実施が可能であることを確認している。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Breeding Science
巻: 70 ページ: 13-18
https://doi.org/10.1270/jsbbs.19075
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