研究課題/領域番号 |
18KK0180
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
黒田 慶子 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20353675)
|
研究分担者 |
升屋 勇人 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70391183)
梶村 恒 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10283425)
遠藤 力也 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 研究員 (90634494)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
|
キーワード | 養菌性キクイムシ / Euwallacea / Xylosandrus / 樹皮下キクイムシ / Hypocryphalus / Fusarium / デイゴ / マンゴー |
研究実績の概要 |
1)キクイムシ類の探索 ①沖縄県のデイゴ樹幹ではEuwallacea属の養菌性キクイムシ3種が検出されているが、台湾のデイゴにはキクイムシの穿入はなかった。②石垣島のマンゴーの枝ではE. fornicatusとE. perbrevisの穿入・繁殖を確認した。一方、台南の果樹研究所のマンゴーの枝には、養菌性キクイムシのXylosandrus discolorと、樹皮下キクイムシのHypocryphalus mangiferaeが生息していた。台南の自生マンゴーの枝では養菌性キクイムシEccoptopterus spinosusの加害があった。 2)Fusarium属菌の地理的分布とキクイムシとの関係 ①台湾台中のデイゴには沖縄県とは異なって軟腐症状がほとんどなく、唯一採取した箇所から4種類のFusarium属菌が検出された。うち2種類はFusarium solani species complex(FSSC)に属し、その1種はITSを含む4領域のDNA解析の結果、養菌性キクイムシと共生するAmbrosia Fusarium clade(AFC) のF. pseudensiformeと判断され、沖縄県の菌と同種と推測された。②石垣島のマンゴーの枝で、養菌性キクイムシと孔道周辺の樹木組織から検出された4種類の菌は、ITS領域の解析では仮称A2, A3, A4の3菌株はAFCに属することが判明した。デイゴの病原菌と比較すると、デイゴのit-2株とA4はITS領域の塩基配列が一致し、これらは同種か近縁であると考えられた。 3)Fusarium属菌と随伴酵母の生理生化学的特性 デイゴから検出された3菌株の生理学的性状を明らかにした。3菌株とも、幅広い単糖類・二糖類・三糖類、有機酸、糖アルコールを炭素源として資化できた。また、35℃では旺盛に増殖したが、37℃ではほぼ増殖しなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り推進した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画では,台湾の研究者と共にキクイムシ類および随伴菌の地理的分布を調査する予定であった。しかし,新型コロナウイルス(COVID-18)の影響のため、台湾を中心とする海外調査の実施は目処が立っていない。海外調査が不可能な場合は,沖縄県下のデイゴとマンゴーに生息する養菌性キクイムシ類(Euwallacea属)およびFusarium属菌のほか,本州において同属のキクイムシの共生菌で病原性のあるCeratocystis属菌などを対象として研究を進めるが,当初の研究目的は達成できない。達成のためには1年程度の研究期間延長により,台湾での調査を実施したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に国際的な共同研究を発展させるため,消耗品等の購入を少なくした。また,COVID-19の蔓延に伴い,2019年3月に参加予定であった学会がすべて中止になり,旅費の使用額が減ったことで,予定より多くの残金が出ることになった。
|
備考 |
研究内容について解説:本研究ではキクイムシ類と随伴・共生菌の接点の把握、両者の生息環境や多様な生存戦略の比較によっ て、相互の生態的依存性を明らかにする。また、随伴・共生菌の近縁関係とともに、養菌性キクイムシ共生菌の病原性獲得の条件を検証す る。
|