研究課題/領域番号 |
18KK0182
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
長井 敏 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, グループ長 (80371962)
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研究分担者 |
安池 元重 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 主任研究員 (20604820)
本郷 悠貴 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 研究員 (20737316)
宮下 英明 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50323746)
及川 寛 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, グループ長 (80371855)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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キーワード | Alexandrium catenella / 有毒渦鞭毛藻 / チリ / 分布拡大 / 薬剤耐性菌 / ショットガンシーケンス / 遺伝的多様性 |
研究実績の概要 |
30年度の研究計画として、Alexandrium catenellaの集団遺伝学解析に関しては、1) チリ沿岸の9地点の海底泥の鉛直コアを採集し、2 cm毎にコアを切り出す。2) 切り出した泥中のA. catenellaシストの密度計数を行う。3) 5地点3層の泥の培養を行い、クローン培養株を確立(n = 5 x 3 x 40)し、集藻後、各培養株からDNAを抽出する。4) 確立した培養株の毒分析を実施する。一方、薬剤耐性菌の検出と定量に関しては、1) 3本のコアを用いて2-3 cm毎に切り出したコアサンプルのDNAを抽出。ショットガンライブラリーを作製し、NGSにより配列取得する。2) NGSデータを解析し、薬剤耐性遺伝子の網羅検出を行い、各コアの年代と多様性との関係について解析する、である。 30地点で採泥が終了し、本研究に必要な採泥は終了した。A. catenellaに関しては、各コアサンプルを各20層の画分に切り分け、冷蔵保存している。現在、耐久性シストの鉛直プロファイルを明らかにするため、倒立型蛍光顕微鏡を用いた計数を実施中であり、5地点において計数が終了した。申請時当初は、長井が開発したAlexandrium tamarense用のマイクロサテライト(MS)マーカーを使用予定でいたが、チリ産のA. catenellaは、他海域の集団と比べ独自性が高く、既存のMSマーカーを用いたジェノタイピングが難航する可能性が考えられたため、チリの単離株を用いて、新たにMSマーカーを開発することにし、現在、MS領域の配列を取得中である。開発されたMSマーカーの評価を行うために使用予定の40のクローン株の単離・培養株の確立は終了した。薬剤耐性菌の検出に関しては、サケ養殖漁場付近の採泥地点は完了した状況にあり、冷凍保存済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請は、昨年度10月に採択され、約半年しか研究実施期間が取れず、丸1年間の予定で計画した研究内容が実施できたわけではないが、採泥に関しては、有毒渦鞭毛藻Alexandrium catenellaの集団遺伝学研究と薬剤耐性菌の研究に必要なコアサンプルの採集はほぼ完了したと思われる。A. catenellaの集団遺伝学研究を計画通りに進捗させるためには、多数の培養株の確立が必須であるが、チリの共同研究者のグループが体制を確立したため、本年度、スムースに培養株の単離、DNA抽出のための集藻、DNA抽出が完了すると予想される。高度多型性を示すマイクロサテライトマーカーの開発も、研究代表者の長井は、20種類で開発した経験があり、本年度中にマーカーの開発が完了し、解析を開始できると想定している。ゲノムワイドな多型解析(SNPs検出)手法として知られるMIG-seg解析も、長井・研究分担者の安田は解析経験があること、また、本法の開発者である東北大学の陶山准教授も連携研究者として協力いただくことになっている。従って、DNA抽出が完了次第、NGSによる配列収集と解析が進められると予想している。薬剤耐性菌の検出と解析に関しては、コアの各画分からDNA抽出し、NGSによる配列収集を行うところまでは、本年度の前半に完了すると予想している。以上の内容から、予想通りの進捗と自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
既に本研究に必要な泥コアの採集は完了したと思われるが、A. catenellaの集団遺伝学解析を遂行するためには、クローン培養株の効率的な確立が、本研究の律速となる。どの海域のどのコアサンプルのどの層にどのくらいの耐久性シストが存在するのかは、計数の結果を待たないと不明である。このため、計数が終了しない限り、培養株確立のための培養も開始できず、この部分の進捗が本研究の実施に影響を及ぼすと考えている。シストの計数は、比較的時間のかかる作業であり、かつショートカットできない部分なので、とにかく効率良く進められるよう、努力必要がある。 薬剤耐性菌の検出・解析に関しては、京都大学準教授、魚類養殖が実施されていないメキシコの海域で泥コアを本年7月に採集予定であり、メキシコ大学のグループにより、DNA抽出が行われる予定となっている。ただし、メキシコにおける生物遺伝資源の持ち出し(ABS)に関する規制が厳しく、DNAを持ち出しすることができないため、メキシコの共同研究者により、シーケンシング外部委託してもらい、支出は長井の所属研究機関を通して行う方法を検討している。以上、メキシコのコアサンプルをネガティブコントロールとして比較することで、チリにおける薬剤汚染状況の実態が把握できるものと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算が10月に採択され、研究実施期間、予算使用期間が半年しかなかったので、予想よりも支出が少なくなった。今年度は、次世代シーケンシングに費用がかかるので、翌年度分と合わせて予算を有効活用する予定である。
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