研究課題/領域番号 |
18KK0183
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
内田 義崇 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (70705251)
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研究分担者 |
多胡 香奈子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (20432198)
山本 昭範 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20733083)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌微生物 / 土壌劣化 / 硝化 |
研究実績の概要 |
申請者らは、サブサハラアフリカにおける農地開発が土壌微生物コミュニティーの構造および機能にどのように影響を与えるかを調べてきた。農地開発によって、土壌中の栄養素である炭素や窒素は減少していたため(土壌劣化)、多くの微生物にとって不利な状況であると予想していたが、予想に反して、微生物の多様性(種数)は農地開発によって増加する傾向にあった。また、その際、土壌中でアンモニアを硝酸へと形態変化させる「硝化菌群」の相対存在量や多様性は上昇していた(大東、内田ら;未発表)。そこで、この農地開発前後の土壌を用いて、硝化菌コミュニティーの構造と硝化能力に焦点をあてた培養試験を行った。その結果、硝酸生成速度は土壌を採取したサイトによってかなり異なること、各サイトでは農地で高くなっていることがわかった。また、この硝酸生成速度と存在量が正に相関している硝化菌の種が、サイトによって偏在していること、および農地開発によって増えてくることがわかった(大東、森、多胡、内田ら;未発表)。今後は硝化菌群の動態と、全体の微生物多様性の関連について、機能遺伝子解析や安定同位体を用いた解析によって調べていく予定である。加えて窒素循環機能の他の部分(例:窒素固定や脱窒)などについても調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は土壌採取と主に基礎的な土壌物理化学性を調べた。2年目で生物性(微生物コミュニティー構造など)を、次世代シークエンシングによりDNAデータを得た後に、QIIME2やRによる解析により調べた。この研究結果(微生物多様性・硝化菌コミュニティー・推定される機能遺伝子量の変化)は複数の学会で発表され、第68回日本生態学会において英語口頭発表聴衆特別賞を受賞した。これは現在、共同研究者であるミュンヘン工科大学のSchloter教授との共著で論文執筆中である。また、硝化菌の動態に着目し、培養試験および培養土壌中の硝化機能遺伝子であるamoAの次世代シークエンシングを行った。この研究結果は複数の学会で発表するとともに、共同研究者である多胡上級研究員(農研機構)との共著で論文執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
硝化菌はアンモニアを硝酸へと形態変化させる「硝化反応」を進めるとともに、大気中の無機態炭素(二酸化炭素)を固定し、有機態炭素に転換して自身の生体を構成する「独立栄養微生物」である。硝化菌が固定した有機態炭素は土壌に蓄積され他の有機態炭素を餌とする微生物(従属栄養微生物)にも影響を与えていると考えられる。そこで、申請者らは、この硝化菌の炭素固定能力と有機態炭素蓄積量・微生物多様性に着目して研究を行う予定である。硝化菌を介して有機態炭素の蓄積および微生物多様性の上昇が起こっていれば、土壌劣化による農業生産性の減少が問題となっているサブサハラアフリカにおいて、微生物機能を活用した土壌保全方法の提示につながると考えている。しかし、硝酸生成速度が高すぎると、土壌中の窒素の減少にも繋がり、そのバランスの評価もしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の移動が制限されており、一部の実験を実験室内で遂行するなどの対応をとったため。使用計画としては、コロナ禍の状況を鑑みつつ次年度の実験用途として使用予定である。
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