土壌において炭素量の欠乏は様々な負の影響がある。例えば水分や栄養素の保持力の低下や微生物量や多様性の減少などである。これまでの研究では主にザンビア、ケニア、マラウイといったサブサハラアフリカの土壌を対象としてきたが、元々の炭素量が低い(森林や耕作放棄地のようなところでも2%程度)場所が開発によってさらに低くなっていることがわかってきた(農地では1.5%程度になる)。しかし、微生物性の変化には興味深い傾向が見られてきた。具体的には微生物の量的減少が農地開発によっておきるものの、微生物多様性は農地開発によって増加しており、さらに硝化菌グループ(大気中の炭素貯留能力を持つ)の相対存在量が増加することもわかってきた。 そこで、最終年度は硝化菌の存在と微生物多様性の変化の関連性について調べた。この関連性がわかれば従来のように単純に農地開発によって微生物の量や多様性が減るという概念が場所によっては、特に元々の土壌炭素量が低いサブサハラアフリカでは当てはまらないということがわかる。 実験手法としては、ザンビア等で採取した土壌を硝化菌に特化したDNAプライマで増幅しそのコミュニティ構造を調べ、異なる地域でも農地化によって共通して変化する硝化遺伝子群が居ないかを調査した。 その結果、サブサハラアフリカ土壌の農地開発によって特異的に増える、もしくは減る硝化菌グループが存在する可能性を示唆するデータを得ることができた。この結果はサブサハラアフリカ農地の土壌炭素欠乏がどのように低減できるか、または農地開発によって土壌炭素やその他栄養素の枯渇が起きないようにするための経営指針に繋がる基礎情報となった。
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