研究課題/領域番号 |
18KK0196
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉村 成弘 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (90346106)
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研究分担者 |
粂田 昌宏 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00582181)
吉田 藍子 北海道大学, 医学研究院, 特別研究員(PD) (70831288)
パウデル サラド 北海道大学, 医学研究院, 助教 (30793939)
植村 知博 お茶の水女子大学, 理系女性教育開発共同機構, 准教授 (90415092)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 高速原子間力顕微鏡 / 超解像顕微鏡 / エンドサイトーシス / 膜動態 |
研究実績の概要 |
フェーズ1:高速原子間力顕微鏡と超解像顕微鏡との融合 昨年度に引き続き、ハイブリッド顕微鏡の構築に取り組んだ。6月には海外共同研究者であるJonas Ries (欧州分子生物研究所)を招聘し、セミナーを開催するとともに、高速原子間力顕微鏡に超解像光学系を導入する設計に関して2日間にわたり議論した。また、北海道大学には、あらたに導入した高速原子間力顕微鏡に対して、斜方照射による高分解能蛍光観察システムをハイブリッドさせ、その組み上げと調整をおこなった。 フェーズ2:ハイブリッド顕微鏡を用いた膜変形・切り離し過程の可視化解析 ハイブリッド顕微鏡による光学分解能の上昇と共に、時間分解能の向上に取り組んだ。従来の10秒から2秒へと分解能を向上させることに成功し、クラスリン依存的エンドサイトーシス過程の膜変形、切り離し過程を、より詳細に可視化解析することに成功した。この新技術に、ダイナミン、アクチン、BARドメインタンパク質のRNA干渉や阻害剤を組み合わせることで、これらのタンパク質が、閉口過程の異なるステップで機能していることを示すことに成功した。 若手育成に関しては、若手分担者である吉田(北海道大学)が米国細胞生物学会に参加し、口頭発表をおこなった。ハイブリッド顕微鏡によるクラスリン依存的エンドサイトーシス過程の観察に関する研究成果であるが、ポスターから口頭発表に選出され、国際舞台で英語での口頭発表をおこなったことは若手育成の点で大きな成果であった。また、同学会には海外共同研究者であるYongli Zhang (Yale大学)も参加しており、今後の共同研究(エキソサイトーシス過程の観察)についても議論をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッド顕微鏡の空間分解能の上昇に関しては、ハードウェアを現在も組み上げ中であり、予定よりもやや遅れている。ハイブリッド化による空間分解能の低下がその主な原因であり、その改善に取り組むとともに、高速原子間力顕微鏡とのハイブリッド化に適した光学系に関して、共同研究者であるRiesと情報共有しながら設計を試行錯誤している。一方、時間分解能の向上では大きな進歩が見られ、クラスリン依存的エンドサイトーシスの閉口過程の分子機構をこれまで以上に詳細に可視化解析することに成功している。若手育成に関しても海外での国際学会で口頭発表に取り上げられるなど、大きな成果が得られた。これらを総合すると、概ね計画通りに進捗していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、超解像や他の高空間分解能イメージングとのハイブリッド化を進めると同時に、高時間分解能イメージングで、クラスリン依存的エンドサイトーシスの閉口過程における分子機構を明らかにし、論文として公表する予定である。また、次年度からはフェーズ3を開始し、お茶の水大学の植村とYale大学のZhangと共同で、エキソサイトーシスのイメージングも開始する予定である。まず、この過程のマーカーとなるタンパク質(Syntaxin, VAMP2)を蛍光タンパク質と融合させたものを培養細胞に発現させ、ハイブリッドイメージングをおこなう予定である。来年度も引き続き、若手分担者には海外の学会での口頭発表に積極的に挑戦してもらう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月に予定されていた九州での国内学会の中止、および共同研究先であるオリンパスがテレワークに切り替えたことによる共同研究の中断などで、年度末に支出する予定であった旅費を次年度に繰り越した。オリンパスとの共同研究に関しては次年度に再開・継続する予定であり、その際に使用する予定である。中止になった学会に関しては、次年度、別の国際学会参加費用等に充てる予定である。
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