研究課題/領域番号 |
18KK0199
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
三谷 恭雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (10358103)
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研究分担者 |
蟹江 秀星 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (10828304)
近江谷 克裕 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 招聘研究員 (20223951)
二橋 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (50549889)
光田 展隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (80450667)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | 発光生物 / ルシフェラーぜ / ルシフェリン / ゴカイ / 分子系統解析 / ウミホタル |
研究実績の概要 |
本研究では、世界に散在する発光生物について発光酵素の取得等を通じて、その多様性を明らかにするとともに、発光機能獲得の意義に迫ろうとしている。当初の予定では、主に米国の研究者と共同で北米産の発光ゴカイについて研究を進めることを想定していたが、COVID-19の影響が長引いており北米での研究実施が困難な状況が続いている。そのため、これまでに当該共同研究者とともに進めていたカリブ海のウミホタルの発光酵素について、日本国内種との比較も含めた観点で、酵素特性の解析を進めた。カリブ海の種は生殖行動に発光を利用していると考えられており、その行動特性と酵素特性の関連を示唆する結果が得られた。また、合わせて、国内での発光生物の探索を継続し、能登半島に生息する紫色の発光を伴うフサゴカイを発見した。本種は、その形態的な特徴から未記載種であることが示唆され、既知の発光基質などは検出されなかった。さらに当該発光フサゴカイについてRNA-Seq解析を行い、既知の発光酵素遺伝子に対して相同性検索を行ったが、有意な相同性を示す配列は見出されなかった。これらのことから本種は新規発光分子機構を有することが示唆された。また、発光が知られながらその分子機構は未解明であったサクラエビ(Lucensosergia lucens)についても試料入手ができたため解析を行なった。新鮮なうちに凍結された試料を用いてRNA-Seq解析を行うことで、良好なデータが得られたが、既知の発光酵素様配列は存在していなかった。今のところ、新規発光分子機構の発見には至っていないが、今後も試料採取を継続し、新たなアプローチで発光分子機構解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の中心的な位置付けとなる外国での共同研究先との合同フィールドワークが実施できていないという点において、想定より進捗が遅れていると考えられる。一方で、本課題で探索する生物種はいずれも世界に薄く散在するものであり、当初から、対象とする生物試料の採取が難航した場合も想定して研究を計画している。そこで、今年度はウミホタルを主な対象として研究を進めることで、一定の成果は得られたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
依然として、外国での共同研究は見通しが立たないため、最終年度となる令和4年度はデータ取得が進みつつあるウミホタルの発光酵素を対象とした解析を進める。COVID-19の状況は予断を許さないものの徐々に影響は小さくなっているため、状況を見極めつつ、可能な範囲で研究経費の節約に努め、研究期間を一年延長し、令和5年度内での外国共同研究も選択肢として考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
外国旅費として想定していた部分の執行がなくなり、代わりに国内での試料採取旅費として執行したが、当初の想定よりも試料数が少ないため外注分析を予定していた費用が想定を下回った。また、テレワークの機会も多くなり、シーケンスデータの解析などに注力したために物品費も想定を下回った。翌年度分として請求している金額は、遺伝子解析のための人件費や新たな国内種の解析費用として執行を想定している。
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