研究課題/領域番号 |
18KK0201
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
木村 亮介 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00453712)
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研究分担者 |
佐藤 丈寛 金沢大学, 医学系, 助教 (10558026)
小金渕 佳江 琉球大学, 医学部, 特命助教 (10753593)
石田 肇 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70145225)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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キーワード | 古代DNA / シベリア / ゲノム / 頭蓋形態 / 人類学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、新モンゴロイド的形質の起源地と考えられる北アジア地域に注目し、バイカル湖周辺における先史時代から現代にかけての人類集団の変遷を復元することを目的とする。そのために、①最新の三次元形態解析手法を用いて頭蓋形態の時代変化を明らかにする。②古人骨のゲノム解析を行い、これまでの現代人および古代人ゲノムと比較することにより、遺伝的成分の地域差および時代変遷を明らかにし、形態データとの関連について検討する。③さらに、歯石のDNA解析および骨の炭素・窒素安定同位体分析により、当時の食性を明らかにし、文化や生業についての知見を得る。 本年度は、3個体の新石器時代人骨から得られたDNAからライブラリーを作成し、次世代シーケンシングにより約0.06-0.67xの平均Depthでゲノムデータを得て集団遺伝学解析を進めた。主成分分析、ADMIXTUREを用いたクラスター解析、TreeMixを用いた系統樹解析、F3やD統計量を用いた解析の結果として、バイカル湖周辺の新石器時代人は、現代のシベリアを含む北アジア集団とも東アジア集団とも異なることが示された。バイカル湖周辺の新石器時代人はMal'taやAfontova Goraにおける後期旧石器時代人骨がもつ遺伝的組成を少し残しており、現代シベリア集団ではその組成がさらに薄まったと考えられる。逆に、現代シベリア集団では南からの遺伝的影響が増す。これらは、後期旧石器時代および新石器時代以降における絶え間ない南北方向のヒトの拡散を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究協力者の産休などにより、解析が進んでいない部分がある。
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今後の研究の推進方策 |
1)頭蓋形態の解析: 頭蓋から取得した三次元デジタルデータを用いて、形態解析を行う。幾何学的形態測定の手法を用いて多変量解析により形状パターンを抽出し、遺跡や時代による違いを検証する。さらに、ゲノムで推定された集団との整合を考察する。 2)古人骨ゲノム解析: 次世代シーケンシングによって解読されたゲノム配列を既存の古代および現代人のデータと共に集団遺伝学的に解析し、バイカル周辺地域集団におけるゲノムの変遷を明らかにする。また、ゲノムの変遷と頭蓋形態の変遷の相関を検証する。さらに、状態の悪い試料も含め多個体に対して、アジア特異的形質と関連することが知られている遺伝子変異について遺伝子型をPCRまたはキャプチャーシーケンシング法を用いて調べ、その集団内頻度の変遷を追う。 3)歯石DNA解析: 歯石試料に含まれるDNAを次世代シーケンシングすることにより得られたデータをBLAST解析することにより、歯石中に検出される食物由来DNAを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大の影響で年度末の出張がキャンセルあるいは延期になるなどの理由で次年度使用額が生じた。ただし、次年度も旅行が制限される可能性があるため、オンライン会議環境の整備やゲノムデータ解析にかかる経費として使用する。
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