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2019 年度 実施状況報告書

ヒキガエル利用からホタル利用へ:毒源を変化させたヘビ類の進化過程の探求

研究課題

研究課題/領域番号 18KK0205
研究機関京都大学

研究代表者

森 哲  京都大学, 理学研究科, 准教授 (80271005)

研究分担者 森 直樹  京都大学, 農学研究科, 教授 (30293913)
城野 哲平  琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, ポスドク研究員 (70711951)
竹内 寛彦  日本大学, 生物資源科学部, 助教 (40726444)
江頭 幸士郎  北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10738826)
研究期間 (年度) 2018-10-09 – 2022-03-31
キーワード防御器官 / ヘビ / 餌毒利用 / 進化 / ホタル
研究実績の概要

本年度は5月から6月にかけてと9月に中国に渡航し、野外でのヘビおよびホタルの採集、ならびに成都生物研究所での行動実験と標本計測を行なった。5月~6月は重慶にてミゾクビヤマカガシを、四川省のシンゴウにてイツウロコヤマカガシを多数採集した。9月には雲南省でレオナルドヤマカガシの採集を試みたが、アカクビヤマカガシしか捕獲できなかった。これらと前年度に採集した種において、頸腺液の化学成分分析を行なったところ、イツウロコヤマカガシはホタル毒由来の物質、ミゾクビヤマカガシはヒキガエル毒由来の物質、レオナルドヤマカガシは両者に由来する物質を持っていることが明らかになった。
イツウロコヤマカガシがホタルを検知して餌として認識するのに関わっている化学物質を明らかにするために、ホタルを極性の異なる溶媒に入れて体表物質を抽出し、それらに対するヘビの嗜好性を比較した。現在のところ物質の特定には至っていないが、候補物質を限定しつつある。
また、成都生物研究所に保管されている液浸標本を用いて、中国産ヤマカガシ類の頭骨形態を計測し、食性と関連した顎形態の多様化を調べた。その結果、カエル食の種はホタル食の種に比べてより大きな餌を呑み込めるような頭骨形態を持っていることが示された。
一方、6月より中国の共同研究代表者のChen助教が京都大学に長期滞在し、日本国内でのヤマカガシやヒキガエルの採集、データの分析、および、共同研究実施についての協議を行った。また、国内におけるヒキガエルの皮膚毒成分の地理的変異を分析し、毒成分は概ね系統関係を反映していること、しかしながら限定された地域に特異的な成分があることなどがわかった。さらに、ヤマカガシの頸腺毒成分についての地理的変異の分析を進行中である。
1月にはニュージーランドで開催された第9回国際爬虫両生類会議において成果を2つの演題として口頭発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一部の種の採集個体数は予定を下回っているが、全体的な計画には特に大きな支障はなく、概ね予定通り進んでいる。

今後の研究の推進方策

本年度は引き続き中国大陸産の3種(レオナルドヤマカガシ、ミゾクビヤマカガシ、イツウロコヤマカガシ)を主な対象種とする。6月から10月にかけて中国を訪問し、中国の共同研究者の協力のもとに、それぞれの生息地域を訪れ、野外でこれらの種を採集する。特に昨年度に捕獲数が少なかったレオナルドヤマカガシの採集に力を入れる。また、妊娠個体を含む多くの個体の採集が期待できるイツウロコヤマカガシを中心にして行動実験を行う。ミゾクビヤマカガシは分布域が広いため、四川省のほか雲南省、貴州省、陝西省、甘粛省などでの採集を続け、食性や頸腺化学成分の地理的変異分析の対象とする。また、DNAサンプルを各個体群から採取し、それらの系統関係を明らかにするため分子遺伝学分析を実施する。
採集した個体は成都生物研究所で飼育し、頸腺毒の抽出、および、ヒキガエルやホタルに対する嗜好性の行動実験を実施する。また、ホタルとヒキガエルに共通する化学物質の検出実験をさらに進め、ヤマカガシ類がこれらを餌として認知することに関わっている物質の特定を目指す。頭骨形態の比較分析は同研究所が保有するマイクロCTスキャナーを利用した形態分析も試み、骨形態だけでなく歯の形態の比較も実施する。
日本国内のヤマカガシおよびマドボタル類も採集し、毒成分の化学分析および嗜好性実験を行う。さらに、毒成分の構造決定が難航している中国産マドボタルの分析も進める。また、ヒキガエルの皮膚毒とヤマカガシの頸腺毒の地理的変異を比較し、頸腺毒の変異に関わる要因を探索する。一方、昨年度実施できなかった台湾産のスウィンホーヤマカガシの採集と行動実験を現地の研究協力者の支援を得て試みる。

次年度使用額が生じた理由

概ね計画通りに遂行したが、論文公表が年度末になったことにより、支出を予定していた論文掲載料の請求が年度を超えてしまったため、大きな繰り越し額が生じた。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] 成都生物研究所/楽山師範大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      成都生物研究所/楽山師範大学
  • [雑誌論文] Dramatic dietary shift maintains sequestered toxins in chemically defended snakes2020

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya Yoshida, Rinako Ujiie, Alan H. Savitzky, Teppei Jono, Takato Inoue, Naoko Yoshinaga, Shunsuke Aburaya, Wataru Aoki, Hirohiko Takeuchi, Li Ding, Qin Chen, Chengquan Cao, Tein-Shun Tsai, Anslem de Silva, Dharshani Mahaulpatha, Tao Thien Nguyen, Yezhong Tang, Naoki Mori, and Akira Mori
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 117 ページ: 5964-5969

    • DOI

      10.1073/pnas.1919065117/-/DCSupplementa

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 生物が作り出す毒:どくどくしくない毒のはなし2020

    • 著者名/発表者名
      山下まり・此木敬一・稲垣英利・森 直樹・森 哲
    • 雑誌名

      化学と生物

      巻: 58 ページ: 111-119

  • [学会発表] Toads or fireflies? Which do Asian natricine snakes prefer as a source of steroidal toxins?2020

    • 著者名/発表者名
      Fukuda M., Mori A., and Chen Q.
    • 学会等名
      The 9th World Congress of Herpetology
    • 国際学会
  • [学会発表] Regional characteristics of toxic components in Japanese toads2020

    • 著者名/発表者名
      Inoue Takato, Nakata Ryu, Ujiie Rinako, Yoshinaga Naoko, Savitzky Alan H., Mori Akira, and Mori Naoki
    • 学会等名
      The 9th World Congress of Herpetology
    • 国際学会
  • [学会発表] ヤマカガシ(Rhabdophis tigrinus) が有する頸腺毒成分の地域的特徴2020

    • 著者名/発表者名
      井上貴斗、中田隆、吉永直子、Alan H. Savitzky、森哲、森直樹
    • 学会等名
      2020年度日本農芸化学会
  • [学会発表] 中国産ヤマカガシ類の頸腺毒の由来および頭部の形態変化に関する考察2020

    • 著者名/発表者名
      福田将矢・井上貴斗・Alan Savitsky・Piao Yige・城野哲平・Chen Qin・森直樹・森哲
    • 学会等名
      第67回日本生態学会大会
  • [学会発表] Does an Asian natricine snake recognize fireflies that have cardiac steroidal toxins?2019

    • 著者名/発表者名
      Fukuda M., Mori A., and Chen Q.
    • 学会等名
      The 36th International Ethological Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] Unexpected origins of defensive compounds in animals2019

    • 著者名/発表者名
      Naoki MORI and Akira MORI
    • 学会等名
      The 10th Conference of Asia-Pacific Association of Chemical Ecologists
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ヒキガエル属 (Bufo) が有する耳腺毒成分の地域的特徴2019

    • 著者名/発表者名
      井上貴斗、氏家里奈子、中田隆、吉永直子、Alan H. Savitzky、森哲、森直樹
    • 学会等名
      2019 年度日本農芸化学会関西中部支部合同大会
  • [学会発表] ヒキガエルかホタルか?中国産ヤマカガシ類の頸腺毒の由来に関する考察2019

    • 著者名/発表者名
      福田将矢・井上貴斗・Piao Yige・Chen Qin・森直樹・森哲
    • 学会等名
      日本爬虫類両棲類学会第58回大会

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公開日: 2021-01-27  

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