研究課題/領域番号 |
18KK0208
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
丸山 敦 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (70368033)
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研究分担者 |
畑 啓生 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (00510512)
竹内 勇一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (40508884)
ZIADI Fabienne 沖縄科学技術大学院大学, 物理生物学ユニット, 技術員 (00787294)
八杉 公基 宇都宮大学, 工学部, 研究員 (50722790)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 古代湖 / 摂食戦略 / 多種共存 / シクリッド / 東アフリカ |
研究実績の概要 |
2018年度の終盤に始まった本研究ではあるが、国内・国外での綿密な打ち合わせを経て、マラウイ湖への調査と試料採取、関連論文の執筆と公開、飼育実験計画の具体化など、全体として、十分な進捗を見せていると自己認識している。 具体的には、次の通りである。 マラウイ湖での研究では、現地調査を経て試料収集を組織的に進める目処が立ち、現地協力者による採集が継続されている。タンガニイカ湖での研究についても、現地調査は安全上の都合で2019年度に持ち越したものの、過去の研究で持ち帰った標本の譲渡を受けるなど、想定外の好条件が整いつつある。生体の輸入についても、可能性を示唆するいくつかの手がかりを得ている。 収集した試料は、従来的な形態分析に加えて順次マイクロCT分析にかけられた。統計的解析に向けて順調な準備が整いつつある。効率的に研究を進めるためのテレビ会議を経て、分析の優先順位についても共同研究者間で認識を共有した。すなわち、モデル魚種での新手法の方法論確立と公表を目下の最優先目標とし、ここで確立した手法を適用して効果的に種間比較を進め、進化的な考察へと結びつけていく方針である。 並行して、2つの湖それぞれでモデル魚種を1種ずつ選定し、その3DCG(3次元のグラフィックモデル)を作成する作業を開始した。これは、飼育環境下における行動観察実験において、捕食/逃避行動を誘発する際に革新的なメソドロジーを提供する可能性のあるものである。幸いにも、もっとも興味深い2種について生体の撮影に成功しており、前途は明るいと認識している。 また、本研究の申請の直接的な足がかりとなった複数の研究について、国際学術誌に掲載されるに至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マラウイ湖では、試料収集を組織的に進める目処が立っており、入手済みの試料の形態分析も進められている。タンガニイカ湖は、安全上の配慮から現地調査は2019年度に持ち越されたものの、かつての調査で収集されたサンプルやデータが想定以上に見つかり、これらを再分析することの許可も次々と得られている。解析方法についても、マイクロCTや3DCGの活用において想定外の好条件が得られつつある。
以上より、当初計画以上の進展と自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
国際的な研究者グループによる海外調査として、まずは2019年10月頃にタンガニイカ湖とマラウイ湖を訪れる。可能な限りの分担者が同行し、現地研究者らと有機的な議論を重ねながら、試料採取および観察を行う。特に、現地との強力な信頼関係を生かして、特殊な摂食生態を持つ魚種の採取に注力する。すでに現地研究者による採集やモニタリングが開始されているものもあり、これらについては、現地で成果を確認して微修正を加えていく。
試料は、2018年度に得たものは継続して、今後得るものは入手次第に、摂食形態の計測に供する。計画通り、分担者らが先導してきた従来の計測法に加え、マイクロCT法も活用する。この手法では、骨格以外の形態解析にも可能性を見いだしつつある。 併せて、生体の組織的な入手を試み、3DCGの作成を試みる。作成された3DCGは、別の生体 を用いた捕食被食行動の操作実験に用いる。前例の少ない操作実験からは、新規性の高い知見が得られることが期待される。既に国内の博物館や水族館と連携して、展示水槽での撮影、入手ルートの協働的な模索を始めている。
種間関係を紐解く解析としては、タンガニイカ湖で取られた長期群集組成データをCCM解析に供し、種間相互作用を推定する作業に取りかかる。かつ、マラウイ湖での長期群集組成データを得るためのモニタリング計画に参画する。これらのデータは、上述の形態の類似性と関連づけることで、多種共存のメカニズムまでを探る新たな挑戦となる。当初予定していた系統樹補足のためのDNA分析は、昨年末に新たに英国の研究者が発表した論文に、他の群集に例を見ない現象が報告されており、十分な検討が必要であると判断したため、同論文から情報を得る形を模索する間、様子見とする。 この方針転換によって生じた剰余予算は、上述の形態計測や調査、飼育実験をより充実させる形で有効に活用される見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンガニイカ湖への渡航を安全上の理由で2019年度に持ち越したことが、2019年度の支出が予定より小さくなった理由である。差額は、効率的に入手できた標本の分析に充てる。これによって、研究全体の質が向上することが期待される。
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