研究課題/領域番号 |
18KK0210
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
田中 伸幸 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, グループ長 (40393433)
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研究分担者 |
齋藤 寛 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, グループ長 (00259996)
田島 木綿子 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究主幹 (00450635)
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10509417)
井手 竜也 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (80724038)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | flora / fauna / inventory / taxonomy |
研究実績の概要 |
令和3年度は,依然として新型コロナウイルス感染症の影響により現地でのインベントリー調査ができなかったため,前年度までに収集した標本や他館に収蔵される標本の検討を行った。 その結果,種子植物では, 東部カヤ州の石灰岩地帯から新たにショウガ科ショウガ属1種を記載した。ニューヨーク植物園(NY)に収蔵されるミャンマー北部産標本の検討の結果見出されたクズウコン科未記載種の形態学的研究及び分子系統解析により, 当該種はPhrynium属に近縁の新属と推定された。菌類では, 少なくとも4目20科51属150種以上がミャンマー新産であることが推定されたが,そのうちDNAバーコードによりGeastrum courtecuissei, Phallus merulinus, Lactrius austrotorminosusなど18種を新産種として報告した。 昆虫では, 西部チン州のパトカイ山脈からタマバチ科ナラタマバチ属の一種を新たに記録した。ゴール形成性タマバチのミャンマー初記録となる。貝類では,アンダマン海のランピ島海洋国立公園とその周辺に位置するニャンオーフィー島などでの調査で採集された標本を検討し,ヒザラガイ1種Leptochiton myeikensisを記載した。海棲哺乳類では、ミャンマー各地に保管されている骨格などの標本観察を中心とした調査により、カツオクジラBalaenoptera edeni6個体、ツノシマクジラB. omurai5個体、シロナガスクジラB.musculus2個体、種不明5個体についての現地調査結果を整理した。種不明の5個体については、追加情報を現地共同研究者から得ながら種同定を試みると共に論文化を進めた。ミャンマーの自然史研究者への技術移転として標本管理に関するe-ラーニング動画を制作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
インベントリーという観点では、令和3年度は,依然として新型コロナウイルス感染症の影響により現地での現地の調査ができなかったこと、それに加えて、新型コロナウイルス感染症の影響と政情の不安定により、2019年および2020年に収集した一部の標本資料について、郵便状況により発送が遅れていることが主な原因である。本研究課題の一つとして重要視している人的交流や技術移転については,現地で実施することができなかった。そのため、本課題の一つの重要な要素でもある技術移転については、種子植物,菌類に標本管理の実地の技術移転に代わる方法として約1時間のe-ラーニング動画の制作を行い、これをミャンマーの共同研究機関に広く配信することで自然史標本の採集,作製,管理の技術の移転を図ることとした。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の一つの重要な要素でもある技術移転については、種子植物、菌類に標本管理の実地の技術移転に代わる方法として約1時間のe-ラーニング動画の制作を行い、これをミャンマーの共同研究機関に広く配信することで自然史標本の採集,作製,管理の技術の移転を図ることで、現地での技術移転の代替案としたい。動画をテロップは英語、ミャンマー語のナレーションで配信することで、カウンターパートのミャンマー森林研究所および国立公園や保全地域の所管である野生生物保護局の職員、レンジャーなど幅広い人材を対象とする。現地で保留になっている2019年後半から2020年の調査分の動植物標本の現地からの発送および受け入れを共同研究者とまず進め、それに基づき収集標本の検討を進める。現地に行くことができるようになった場合は、森林研究所内にJICAにより建設された生物多様性研究センター(BRC)を基点として周辺地域で共同フィールドワークを行い、標本採集から標本管理までの技術移転なども同時に実施することで、将来的なBRCを中心とする自然史研究の基盤を整えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、引き続き海外渡航ができなかったため、現地調査にかかる経費の支出がなかった。また、調査時に収集した標本の一部が、郵便事情により現地に保管されていることから、これら当該標本の作製、解析などにかかる費用の支出がなかったこと、国際学会での発表の延期などによる。3月よりJICAのミャンマーでの活動などが再開されたこともあり、次年度の後半には、カウンターパートである森林研究所で、研究の打ち合わせや周辺地域での調査を段階的に再会できた場合に合わせて使用する計画である。
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備考 |
本研究課題で収集した標本を含むこれまでミャンマーから収集した植物標本のデータおよび画像をデータベースとして公開したものである。特に、令和3年度は植物および地衣類に加えて、菌類の標本情報を公開した。標本画像のほか、採集地地図情報、生態写真、DNA配列情報などを項目に加えて、日本とミャンマーの共同研究における研究資料となる標本の基礎データを共有するとともに広く世界に向けて公開している。
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