研究課題/領域番号 |
18KK0211
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
菊池 義智 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30571864)
|
研究分担者 |
伊藤 英臣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (70748425)
細川 貴弘 九州大学, 理学研究院, 助教 (80722206)
松浦 優 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (80723824)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
|
キーワード | 共生細菌 / 微生物 / 昆虫 / 共生 / 進化 |
研究実績の概要 |
本研究全体を通して、国内に生息しないために未調査のままとなっているカメムシ下目の25科をターゲットに絞りその細菌との共生様式の世界的調査を行う。具体的には共生器官の形態や共生細菌の局在性、共生細菌の系統分類を行い、現地で飼育が可能な場合には共生細菌の伝播様式および適応度効果の調査を行う。また共生細菌のゲノム解読を行い、それらカメムシ類における共生細菌の具体的な機能について推定を行う。同時に宿主カメムシ自身についてもミトコンドリアゲノムの解読を行い、カメムシ下目内における各グループ間の系統関係について推定を進め、そこに調査から明らかとなった共生様式をプロットすることで、カメムシ下目内においてどのように多様な内部共生系が進化してきたのか網羅的に明らかにする。3年目は、主要共同研究先である米国アリゾナ大学のMartha Hunter教授との連携体制を深めるとともに、昨年度末に新たに共同研究体制を構築したオーストラリアのCSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)との連携強化を試みた。オーストラリアには、日本やアメリカには見られない未調査の科が14以上は存在することから、連携を深めることで新たな共生系の発見とカメムシ下目における共生の進化史の理解につながると期待される。昨年度は現地訪問も行い良好な関係が構築できつつあったが、本年度はコロナの影響が非常に強く、アメリカとともにオーストラリアも強力なロックダウンが敷かれたこともあり、メールでの近況報告や情報交換すら難しい状況となった。昆虫サンプルの輸入許可について話を進めたいところだが、完了することは依然難しく、また完了したとしてもサンプリング自体が難しい状況下にある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主要な共同研究相手である米国アリゾナ大学のMartha Hunter教授やフランスCNRSとの連携を強化するとともに、オーストラリアとの連携強化に取り組んでいる。本年度はコロナ禍により国際連携強化が非常に難しい状況になっており、昨年度の進捗をなかなか次に繋げることが困難であった。国際連携強化の点では本年度は非常に難しい年であったと言わざるを得ない。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度に思うように推進できなかったオーストラリアCSIROとの関係強化を進め、昆虫採集やサンプルの蓄積、現地における解析を進めたい。さらには輸出入に関する手続きを進め、未知の科について日本国内におけるより詳細な解析を開始できればと考えている。現地スタッフの協力が不可欠だが、新型コロナウイルスの感染状況も踏まえ慎重に交渉を進める。調査地としてはCSIROの昆虫セクションがあるNew South Wales地域を中心とするが、より生物多様性が高い北部のQueenslandやNorthern Territoryについても随時許可を得て調査を試みる。サンプルについては、生きたまま研究拠点に持ち帰ることができる場合にはそのようにし、採集が長期に渡る場合にはエタノールまたは専用の核酸保存液等に保存する。採集されたサンプルについて、すぐに解析が困難な場合には冷凍保存を行う。カメムシの同定については現地の専門家に協力いただくとともに、DNAバーコーディングによる解析を進め、遺伝子データの蓄積の面で現地に貢献する。新型コロナウイルスの影響により国際的な移動は依然として大きく制限される可能性が高い。そのような条件下でも、現地の研究者とメールやテレビ会議により緊密な交流を引き続き行い、研究継続に向けて最大限の努力を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で年度末に予定していた海外渡航が中止となり、また参加を予定していた国内学会の中止により旅費の使用が無くなった。来年度以降、オーストラリア等との連携強化のために本年使用できなかった分の旅費を使用予定である。
|