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2020 年度 実施状況報告書

新規素材とマイクロ加工技術で再現する脳微小空間を用いたニューロン遊走機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 18KK0212
研究機関京都大学

研究代表者

見学 美根子  京都大学, 高等研究院, 教授 (10303801)

研究分担者 宇都 甲一郎  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 独立研究者 (30597034)
中澤 直高  京都大学, 高等研究院, 特定助教 (90800780)
研究期間 (年度) 2018-10-09 – 2022-03-31
キーワードメカノバイオロジー / マイクロファブリケーション / ニューロン移動 / 神経発生 / 細胞骨格 / ライブイメージング
研究実績の概要

昨年度までに国際共同研究者のGrenciがマイクロリソグラフィー技術を用いて作成した通路状のマイクロスペーサー基板を用い、顆粒細胞が神経組織間隙を通過する現象を再現する実験を行なった。中澤は顆粒細胞が隘路に侵入する際のアクチン骨格の動態をライブ超解像観察し、隘路通過の際に逆行性流動が起こり核後方にアクトミオシンが集積することを見出した。そこで多孔性メンブレンを用いた隘路遊走アッセイを用い、薬理実験で制御分子機構を探索したところ、機械刺激感受性チャネルが隘路遊走に必要であることが明らかになった。さらに分子生物学実験を行い、隘路遊走に伴う機械刺激が細胞膜の機械刺激感受性チャネルを活性化し、カルシウム流入によりミオシンリン酸化経路が活性化して後方膜の収縮が起こることが明らかになった。
また、生後発達期の小脳容積・表面積の急激な拡大に伴い、周辺組織から受けるずり応力がニューロン遊走の方向性決定に影響する可能性をin vitro実験で検証するため、異方性伸長を実現するスマートポリマーの開発を進めた。ポリエチレングリコール(PEG)を基本骨格とし、メタロプロテアーゼで分解するペプチド型架橋点を有するハイドロゲル基材の作製に成功した。得られたゲル基材は、添加するメタロプロテアーゼの濃度により分解速度を調節可能で、10%以下の伸長後、ゲル全体の崩壊を生じることが確認された。また、PEGハイドロゲル基材の作製に適応可能な光分解性架橋剤の合成にも成功し、架橋剤がUVA光照射により分解すること、照射強度により分解速度の調節が可能であることを明らかとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

国際共同研究により開発したミクロ加工基板を用いて顆粒細胞の隘路遊走を観察し、アクトミオシンの動態がガラス表面(2D)と隘路(3D)で異なることを見出した。さらにその分子機構の詳細を解明しつつあり、これまで未知だったニューロン隘路遊走制御機構を発見する重要な成果に結びついた。当初計画していた以上の進展があったと考えている。
発生に伴う組織の拡張を模倣する刺激依存的に異方性に伸張する素材の開発においては、メタロプロテアーゼまたはUV照射で伸長する素材を得た。やや当初の計画よりも遅れているが、今後改良し、細胞実験に適用する。
全体として概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

刺激依存的に異方性伸長を実現するスマートポリマーの開発については、現在行なっている分岐構造や分子量の異なるPEGの利用やメタロプロテアーゼ非分解性ペプチド架橋剤を組み合わせた架橋剤混合系について検討を続行し、目標とする基板が整い次第、顆粒細胞やその他極性移動する細胞を培養して、基質からの連続的な引張刺激が遊走の方向付けに寄与するかを検証する。組織3D空間の遊走機構解析については、シンガポールで作成したミクロ加工基板を用いて隘路遊走を再構成し、詳細な分子シグナル経路の全貌を明らかにする。最終年度である今年度終了までに論文投稿を目指す。

次年度使用額が生じた理由

生後発達期の小脳容積・表面積の急激な拡大を模倣する異方性伸長を実現するスマートポリマーの開発を進め、薬剤投与後10%以下の伸長後、ゲル全体の崩壊を生じるハイドロゲル基材の作製に成功した。しかし、目標とする速度と伸長率には達しておらず、次年度での研究の継続が必要となった。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] National University of Singapore(シンガポール)

    • 国名
      シンガポール
    • 外国機関名
      National University of Singapore
  • [雑誌論文] ABCA13 dysfunction associated with psychiatric disorders causes impaired cholesterol trafficking2021

    • 著者名/発表者名
      Nakato Mitsuhiro、Shiranaga Naoko、Tomioka Maiko、Watanabe Hitomi、Kurisu Junko、Kengaku Mineko、Komura Naoko、Ando Hiromune、Kimura Yasuhisa、Kioka Noriyuki、Ueda Kazumitsu
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 296 ページ: 100166~100166

    • DOI

      10.1074/jbc.RA120.015997

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] βIII spectrin controls the planarity of Purkinje cell dendrites by modulating perpendicular axon-dendrite interactions2020

    • 著者名/発表者名
      Fujishima Kazuto、Kurisu Junko、Yamada Midori、Kengaku Mineko
    • 雑誌名

      Development

      巻: 147 ページ: dev194530

    • DOI

      10.1242/dev.194530

    • 査読あり
  • [学会発表] Neuronal migration in 3D brain tissue.2020

    • 著者名/発表者名
      見学美根子
    • 学会等名
      第14回ニッチ脳神経脈管カンファレンス
    • 招待講演
  • [学会発表] Mechanical stress by extracellular confinement trigger a mode transition of neuronal migration.2020

    • 著者名/発表者名
      Naotaka Nakazawa, Gianluca Grenci, Mineko Kengaku
    • 学会等名
      第58回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] Beta IIIスペクトリンのプルキンエ細胞-平行線維間の直交回路形成における役割.2020

    • 著者名/発表者名
      藤島和人、見学美根子
    • 学会等名
      第43回日本神経科学大会
  • [学会発表] The dynamic interplay between microtubule-based motors and nuclear movement in migrating cerebellar granule cells.2020

    • 著者名/発表者名
      Chuying Zhou, You Kure Wu, Mineko Kengaku
    • 学会等名
      第43回日本神経科学大会
  • [学会発表] Cytoskeletal regulation of Purkinje cell dendritic arbor morphology. プルキンエ細胞樹状突起形態形成の細胞骨格制御メカニズム2020

    • 著者名/発表者名
      Kazuto Fujishima, Mineko Kengaku
    • 学会等名
      第53回日本発生生物年会

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公開日: 2021-12-27  

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