研究課題/領域番号 |
18KK0226
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 雅裕 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (00444521)
|
研究分担者 |
笹井 美和 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (30631551)
馬 知秀 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (90755266)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
|
キーワード | トキソプラズマ / 中国株 / インターフェロン |
研究実績の概要 |
トキソプラズマ原虫は感染細胞内に「寄生胞」と呼ばれる病原体含有小胞を作り出す。慢性・潜伏感染するこれらの原虫を感染細胞内から排除するためには、宿主の細胞自律的免疫系がこの寄生胞膜を打ち破り原虫を殺傷する必要がある。我々は以前にインターフェロン(IFN)誘導性GTPaseであるGBPがトキソプラズマの感染細胞内での殺傷に重要であることを示した(Yamamoto et al. Immunity. 2012年;Sasai et al. Nature Immunol. 2017年)。今年度、新規のIFN誘導性GTPaseであるIRGB6の重要な役割を報告した (Lee et al. Life Sci. Alliance. 2020年)。IFN刺激した野生型細胞で観察される寄生胞膜の障害は、IRGB6欠損細胞では全く認められない。またIRGB6欠損細胞ではGBPの寄生胞膜への蓄積率が激減したことから、IRGB6はGBPよりもさらに上流で寄生胞膜を認識し破壊する分子であり、IRGB6欠損マウスは原虫感染に高感受性であった。以上のように、IRGB6はトキソプラズマ感染細胞で最初に寄生胞を破壊し原虫を殺傷し、個体レベルで生体防御応答を担う重要な宿主因子であることを明らかにした。また、トキソプラズマ感染によってT細胞からIFN-γが産生されるが、IFN-γをモニターできるレポーターマウスを作製し報告した(Nishiyama et al. Parasit Int. 2020年)。引き続き、まず、中国のトキソプラズマ及び、既に分離している日本産のトキソプラズマからゲノムDNAを抽出し、Covaris 断片化を行った後ライブラリ化し、ペアエンドシークエンスを行い、約100カバレッジのデータを取得した。得られた各ペアリードを、レファレンスゲノム上にマップし、系統樹を作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスおよびCOVID-19の発生のため、海外出張が全くできず、また研究の中心である中国が完全にロックダウンとなったため、試料採取と実験が全くできなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響によって、未だに中国や米国では各大学・研究所とも研究活動がとも再開されていない。再開され次第、分離された株及び日本分離株の増殖を、マウス及びヒト由来細胞を使い、非制限培養条件下及び抗トキソプラズマ作用を持つサイトカインであるIFN-γ刺激した制限培養条件下で検討する。さらにマウス骨髄由来マクロファージ感染系におけるIFN-γ誘導性の抗トキソプラズマ因子として重要であるIFN誘導性GTPaseの原虫への動員率の測定と一酸化窒素の濃度を測定する。またヒト細胞においてはトリプトファン分解酵素の活性を検討する。マウス個体に各トキソプラズマ株を感染させ、経時的に血清を採取し、炎症性サイトカイン(IL-1,IL-18,IL-6,IL-12,TNF-α)、臓器中の原虫数、慢性感染時の脳中のシスト数、そして、マウス個体の生存率を測定し、各株を特徴づける。野生型マウスが感受性とならない株については、IFN-γ欠損マウスやGate-16欠損マウス, iNOS欠損マウスで検討する。以上のプロトコルを統一するために、山本が各地に行き、現地の研究員と一緒に解析を行う。また各地で得られたRNAを基に阪大で笹井が各株のマウス・ヒト細胞への感染時のRNAseq(遺伝子発現)情報も得る。得られた各パラメーターをSNP情報とハプロタイピングを基に原因遺伝子のGWAS解析を米国で行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス発生のため、1-3月期で使用を予定していた中国・韓国でのサンプル採取のための旅費が大幅に余剰したため。次年度で行うために、繰り越した。
|