研究課題
マラリアは年間感染者数2億人、死亡者数44万人にも上る三大感染症のひとつである。第1選択薬アルテミシニンによって、死亡数は大幅に減少したが、耐性原虫がすでにメコン流域から出現・拡散しており、その拡大が懸念されている。我々は新規in-vitro検査法によってアルテミシニン耐性原虫がアフリカ(ウガンダ共和国)で出現していることを世界で初めて発見した。有効な代用薬が開発されていない現在、マラリア患者の90%を占めるアフリカにおける耐性の拡散は大惨事となる。本研究は、アフリカでのアルテミシニン耐性メカニズムの解明と、耐性がどこから出現し、どこまで拡散しているかについて明らかにすることを目的とする。さらに、アフリカでの耐性出現を簡便に検出できる遺伝マーカーの開発にも挑戦する。本課題の達成によって、アフリカでの耐性の迅速検出と広域サーベイランスが可能となり、アフリカでのアルテミシニン耐性対策へ貢献できる。当該年度は研究実施期間が半年だったこともあり、現地調査は実施していない。ウガンダ、パプアニューギニアでの調査で得られた検体の集団遺伝学的な解析をオックスフォード大学と共同で実施した。その結果、パプアニューギニアにおけるアルテミシニン耐性遺伝子K13のC580Y変異出現の起源がメコン流域からの耐性移入ではなく、太平洋州における独立した出現であること、その分布はパプアニューギニアのみならずウエストパプアにも存在する可能性を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
集団遺伝学的解析はオックスフォード大学との共同プロジェクトを軸に実施、さらなる海外共同研究機関との連携へと発展している。
アルテミシニン治療効果の評価 と解析に用いる検体の収集海外調査を目的とした現地調査をウガンダ、パプアニューギニアで実施する。海外調査で得られた凍結患者血液検体から培養マラリア原虫株を樹立し、詳細なメカニズムを解明する。さらに、ウガンダで得られたアルテミシニン耐性原虫の地理的起源と拡散様式を解明するために、現地調査で得た検体の全ゲノムを決定、すでに全ゲノム解析が終了しているグローバルなマラリアゲノム情報(オックスフォード大学が保持)とともに新規集団ゲノム学的解析を実施、アフリカの耐性原虫に共通する染色体領域を決定し、耐性の地理的起源、その祖先関係、拡散経路を解明する。最終的なゴールとして、アフリカのアルテミシニン耐性原虫を検出する遺伝マーカーを開発する。
当初予定していた海外調査を次年度に延期したため計上していた旅費や謝金、および得られた検体の解析経費を次年度の研究計画とし、計上することとなった。
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Malar J.
巻: 1 ページ: 17:434.
10.1186/s12936-018-2585-x