研究課題/領域番号 |
18KK0231
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
美田 敏宏 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (80318013)
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研究分担者 |
森 稔幸 順天堂大学, 医学部, 助教 (00462739) [辞退]
池田 美恵 順天堂大学, 大学院医学研究科, 学振特別研究員(RPD) (40734314)
バリカガラ ベテイ 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (70805895)
堀井 俊宏 大阪大学, 微生物病研究所, 寄附研究部門教授 (80142305)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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キーワード | マラリア / 薬剤耐性 / アルテミシニン / K13 |
研究実績の概要 |
マラリアは年間感染者数2億人、死亡者数44万人にも上る三大感染症のひとつである。第1選択薬アルテミシニンによって、死亡数は大幅に減少したが、耐性原虫がすでにメコン流域から出現・拡散しており、その拡大が懸念されている。本研究は国際共同研究によってグリーバルなアルテミシニン耐性の出現と拡散を明らかにすることを目的としている。我々は2018年に新規in-vitro検査法であるRing-stage survival assayによってアルテミシニン耐性原虫がウガンダ共和国で出現していることを見出した。さらに2021年にはin vivo耐性が出現していること、アルテミシニン耐性の原因変異がK13のA675VかC469Yであること、A675Vはアフリカ起源とすることを発見し、New England Journal of Medicine誌に発表している。有効な代用薬が開発されていない現在、マラリア患者の90%を占めるアフリカにおける耐性の拡散は大惨事となる。 本年度は新型コロナウイルス感染症により実施できていなかったウガンダでの調査を実施することができた。C469Yについても同様にアフリカ起源であることをパリ大学との共同研究によって明らかにした。さらに、2022年にはA675Vの遺伝子変異頻度が減少する一方、C469Yがそれを置き換えるような形で増加していることも見出した。アルテミシニン併用療法として用いられているルメファントリンへの感受性にはほとんど変化はなく、パートナー薬剤への耐性出現はまだないものと考えられる。第二選択薬としてのピペラキン耐性をex vivoで検討しているが、現在のところ著明な耐性を示す原虫は見つかっていない。これらの結果をさらに発展させるべく、東部ウガンダで長年研究を進めているNijmegen大学(オランダ)、Seatle小児病院(米国)との研究協力を立ち上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はコロナによって海外調査が制限され調査を9月から11月にかけて再開することできた。得られた検体は現在を詳細な解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
コンゴはウガンダと国境を接するためアルテミシニン耐性の研究にとって重要な国であり、耐性の拡散を確認するため、本年度は2回の調査をコンゴで予定している。ウガンダの調査も2回実施する予定である。さらに耐性の拡散を予知できる分子マーカーの開発も引き続き進める。また、パリ大学との共同研究を立ち上げ、アフリカへ渡航しマラリアに罹患した輸入症例の薬剤耐性遺伝子解析を行っており、渡航者を通じた耐性のアフリカでの拡がりも明らかにしていく。さらに、オセアニアにおいてはK13のC580Y変異が出現していること、それがニューギニアオリジンである可能性を明らかにしたが(Miotto,..Mita, PLOS Pathogens 2020)、その後本変異は急激に増加していることを明らかにした(Yoshida,..Mita, Malaria J 2021)。しかし、耐性原虫の地理的拡散とその起源については十分に解明されたとは言えず、さらなる解析(現地調査と検体解析)をオックスフォードとの共同研究によりすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は新型コロナウイルスのパンデミックにより海外調査を実施することができたが、過去3年間できなかった調査のために見込んでいた費用がそのまま残っている。次年度以降にウガンダ共和国およびコンゴ民主共和国等で調査を実施する方針である。
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