研究課題/領域番号 |
18KK0233
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
中山 恒 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (10451923)
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研究分担者 |
谷本 幸介 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (60611613)
谷水 直樹 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00333386)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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キーワード | 低酸素応答 / 代謝酵素 / 遺伝子発現 / 染色体構造 |
研究実績の概要 |
前年度までに構築した実験系を用いた網羅的解析を実施するために、遺伝子配置を核内でイメージングするプローブの大規模な作製を進めた。解析対象として選抜した遺伝子の配列をデータベースより取得して、各々の遺伝子に特異的に結合する複数個のプローブを、専用のアルゴリズムを用いて設計した。また、これと並行して、解析対象の一つである代謝酵素PDHの解析を実施した。ミトコンドリアに局在するPDHは核にも局在することが発見され、注目されている。PDHは核内でもミトコンドリア内と同様に高次複合体を作り、酵素活性を保持していることを明らかにした。PDHの主たる活性制御機構にはリン酸化と発現調節の二通りがあり、両制御機構をミトコンドリアと核で比較したところ、低酸素下ではミトコンドリアPDHのリン酸化が顕著に起こるのに対して、核PDHのリン酸化は限定的であった。一方で、核PDHのタンパク質量は低酸素下で顕著に減少したことから、核PDHは発現量によって主に制御されていると考察された。さらに、乳がん細胞で i) PDHをノックダウンすること、および、ii) 低酸素培養することで、ヒストンH3のアセチル化が減少することを明らかにした。この時に、細胞死、免疫応答、低酸素応答に関与する遺伝子群の発現低下がみられたことから、核PDHは遺伝子発現を制御して、これらの生理応答に働くことが示唆された。以上のことから、代謝酵素がエピジェネティックな変化を引き起こし、クロマチン構造を変化させる役割を担う可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、遺伝子配置を決める分子機構の解析を終える予定としていたが、まだ完了していないため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、代謝酵素遺伝子の網羅的な核内配置のイメージングデータの取得を進める。また、データ解析を実施して、各遺伝子の核内配置に規則性が有るのかを検証する。その情報を基に各遺伝子をグループ分けして、それらの機能と核内配置の関連を解析する。さらに、前年度までの研究で明らかにした、低酸素下でのエピジェネティクス制御機構に着目して、そこで働く代謝酵素やヒストンメチル化酵素をノックダウンした時の、遺伝子の核内配置の変化を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際共同研究先を訪問し、専用の測定機器を用いた大規模解析を実施するための経費を計上していたが、渡航を延期する必要が生じ、次年度以降に実施することとしたため。
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