| 研究課題/領域番号 |
18KK0234
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| 研究機関 | 京都大学 |
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研究代表者 |
田守 洋一郎 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10717325)
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| 研究分担者 |
石原 誠一郎 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (10719933)
昆 俊亮 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 講師 (70506641)
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| 研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2022-03-31
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| キーワード | 腫瘍形成 / 上皮組織 / 細胞増殖 / 組織構造 / 浸潤性 / 平面内細胞極性 |
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| 研究実績の概要 |
ショウジョウバエの成虫原基上皮組織において、がん原性の微小環境（腫瘍ホットスポット）に特異的な基底膜の形状、平面内細胞極性と細胞配置パターンをこれまでの研究で観察している。この腫瘍ホットスポットに特異的な組織構造の形成について、平面内細胞極性形成に関連するシグナル経路、および腫瘍ホットスポット領域で内在的な活性亢進が観察される炎症性シグナル経路の役割を検討するために、Gal4-UAS強制発現系システムを用いて各シグナル経路の主要な構成遺伝子に対するRNAiをホットスポット領域で発現させる実験を行ったところ、どちらのシグナル経路を阻害した場合でも、ホットスポットに特異的な平面極性と細胞配置のパターンに乱れが生じることが確認された。さらに、米国UCLAの国際共同研究先 Taira labでの共同研究により、このパターンを検出するために開発したTCPDプログラムを用いてこの平面極性と細胞配置のパターンの解析を行った結果、ホットスポットに特異的なパターンが上皮組織内の元々の位置から消失するケース、また不完全なパターンとして形成されるケースが観察された。さらに、このような本来の場所のパターンに乱れが生じた場合、元々はなかった場所に新しいホットスポット型パターンが生じていることも確認された。
さらに、一昨年度の研究において、上皮極性遺伝子変異細胞にがん原性Rasの変異を導入した二重変異細胞を用いて、このがん原性変異細胞の挙動を解析したところ、同じ変異細胞のクローンから表現型が異なる2種類の腫瘍が形成されることを発見した。つまり、同じ上皮組織内でも、がん原性変異細胞が管腔側に逸脱した場合、増殖はするが浸潤行動は示さない良性腫瘍を形成するが、その一方で、同変異細胞が基底膜側に逸脱した場合、増殖を止めて多くの突起を伸ばす浸潤性の細胞に変化することが確認された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、予定していた各モデルシステムにおける実験を進めることができている。
ショウジョウバエの上皮組織を用いた実験モデルでは、腫瘍ホットスポットに特異的な平面極性と細胞配置のパターンの基本的な解析に加え、遺伝学的な変異を加えた時にパターンが変更されることを、米国UCLAの国際共同研究先での解析により確認することができた。さらに、本研究課題を推進する中で、がん原性変異細胞の浸潤性獲得についても組織内在性の微小環境による影響を示す予想外の新しい発見があった。昨年度、これに関してもさらに詳しい組織形態学的解析、遺伝学的解析を行ったところ、このがん原性変異細胞の浸潤性獲得のプロセスでも、腫瘍ホットスポットに特異的な平面極性と細胞配置のパターンが関与している可能性が高いことを示す結果が得られており、今後さらに分担研究者との共同研究による展開が予想される。
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| 今後の研究の推進方策 |
現在まで順調に進んでいるため、令和２年度については申請書の計画通り進める。ショウジョウバエの成虫原基上皮組織をモデルにした実験では、これまでに腫瘍ホットスポットに特異的な平面極性と細胞配置のパターン形成への関与が確認された遺伝子各々を変異させて（変異体バックグラウンド、およびGal4-UAS強制発現系システムを用いた部位特異的ノックダウン）、同パターンに変更を加えた時のがん原性変異細胞の挙動を解析する段階に入る。またこのとき、元々の腫瘍ホットスポットの物理的特性の変化を解析するために、TCPDプログラムによる解析とともに原子間力顕微鏡を用いた上皮層基底膜側の硬さの違いを実測する実験も並行して行う。マウスモデルに関しては、Ras変異細胞の排除効率に関してさらに詳細なデータを得るために、各臓器内の領域間での違いに注目して観察を続けていく。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、国際共同研究先の研究室がフロリダ州立大学からUCLAへ移動したことに伴い、夏期に予定していた共同研究のための訪問が11月にずれ込んだ。このため日程調整がうまくいかず、結局研究代表者が一人で共同研究先を訪問することになり、二人分の旅費が浮くことになった。この分は、次年度、同共同研究先を訪問する際、本研究課題に新たに参加することになった大学院生を同行するための費用として活用する予定である。
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