研究課題
ショウジョウバエの翅原基上皮組織において、腫瘍浸潤が始まる特異点の基底膜側の物理特性が同組織の他の領域と違うことを調べるために、特異点の細胞だけを蛍光プローブ(RFP)で可視化し、原子間力顕微鏡(AFM)により表面構造と弾性(ヤング率)の解析を行った。その結果、特異点の基底膜側は、周辺組織と比べて硬いことが分かった。本研究課題で開発した微小管の分布から組織内特異点を予測するプログラム(TCPD)を用いた解析から、特異点は細胞配置極性の鞍点(saddle point)となっており、他の領域に比べて細胞間に圧縮ストレスが生じていると考えられることから、このAFMによる解析結果はTCPDによる予測と一致するものである。これまでの遺伝学的解析から、特異点の形成にNotchシグナル経路が関与していることが分かったので、Gal4-UAS-RNAi発現系を用いて、特異点を含む一定領域でNotchの活性を阻害する実験を行ったところ、TCPDで特異点が確認されなくなった。このNotchが阻害された状態で、がん原性の二重変異細胞クローンを導入すると、腫瘍の増殖は見られたものの基底膜側への浸潤は抑制されたことから、基底膜側への腫瘍浸潤に、特異点の組織構造が重要な意味を持つことが明らかとなった。これらに関する論文は、既にプレプリントサーバで公開しており、現在国際誌に投稿中である。また、マウスモデルにおいて各種臓器の上皮組織にモザイク状に誘導したRas変異細胞の浸潤行動を解析したところ、各組織の領域においてRas変異細胞が移動する方向(管腔側、基底膜側)に違いがあることが分かった。特に基底膜側への浸潤に関しては、肺の細気管支において顕著に割合が高かった。現在、これらの組織における基底膜側への浸潤が高い領域に、ショウジョウバエで確認された組織内特異点と類似の組織構造の存在を探索している。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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