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2022 年度 実施状況報告書

ALS/PDC - 世界3大多発地での環境と遺伝子の cross talk -

研究課題

研究課題/領域番号 18KK0239
研究機関三重大学

研究代表者

小久保 康昌  三重大学, 地域イノベーション学研究科, 招へい教授 (60263000)

研究分担者 森本 悟  三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (00816952)
奥宮 清人  京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携教授 (20253346)
葛原 茂樹  鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (70111383) [辞退]
佐々木 良元  鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (60303723)
研究期間 (年度) 2018-10-09 – 2024-03-31
キーワード筋萎縮性側索硬化症 / パーキンソン認知症複合 / フィールド調査 / 遺伝子解析 / エピゲノミクス / 腸内細菌叢 / プロテオミクス / レジストリ
研究実績の概要

①経年的なフィールド調査と疫学像、臨床像、生活様式や食生活、社会環境の変遷:紀伊半島では、約280例の患者レジストリを用いて解析を進め、世界で初めて紀伊ALS/PDCの自然史を明らかにした。紀伊半島多発地区での患者follow upを継続している。グアム島は2019年9月、パプア州は2019年3月の現地調査以降、新型コロナウイルス感染拡大で現地調査を行えていない。
②腸内細菌メタゲノミクス:2018ー2019年度は、サンプル収集調整と解析に向けた準備を進めた。2020年度は、Thermofisher 社製解析キットを用いて、2021年度は、Ilumina 社製解析キットにより患者の腸内細菌について解析を行い、2022年度に解析結果を得た。
③リスク遺伝子多型解析、エピジェネティクス解析、質量分析:2018年度は、患者とAD脳、健常者脳を用いてエピゲノム変化に違いのあった遺伝子群を同定した。2019年度には紀伊患者脳を用いたmRNA発現解析を行い病態に関連する複数の物質を同定した。2019年度からは、Long cord leading が可能な新たな次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析とハプロタイプ解析を実施している。2021年度からは、TripleTOF6600+ SWATH systemによる質量分析計を用いて紀伊患者脳に特異的な変化を同定に取り組んでいる。2022年度は、質量分析の最終段階に至っている。
④パプア州患者における初めての原因遺伝子解析:2019年5月にAirlangga 大学とMOAを締結した。2019年9月にAirlangga 大学を訪問し遺伝子解析グループとの具体的な解析方法について打ち合わせを行った。2020年3月以降、現地での検体収集は新型コロナウイルス感染拡大のため中止となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

①ALS/PDCの現状を把握するための経年的なフィールド調査と100年前から現在に至る疫学像と臨床像の変遷、および生活様式や食生活、社会環境の変化等、についての比較検討:紀伊半島のレジストリー整備と自然史解析について予定通りおこなった。2020年からの新型コロナウイルス感染拡大に伴い、グアム島とパプアでの現地調査が行えておらず、比較検討は停滞している。
②腸内細菌メタゲノミクス:2018-2019年度は、腸内環境メタゲノム解析に向けたサンプル調整を含めた解析準備を予定通り行った。2021年度は、Ilumina 社製キットにより解析を行い、2022年度は、腸内細菌叢の解析結果を得た。
③リスク遺伝子多型解析と環境要因が遺伝子発現に影響し発病に至るメカニズムとエピジェネティクス解析、質量分析:2019年度は紀伊患者脳を用いたmRNA発現解析を行い、病態に関連する複数の物質を同定し国際誌に採択された(Antioxidants 2020,9,423)。2020年度は、患者脳を用いた2次元電気泳動と質量分析によるspot解析を行なった。2021年度は質量分析に用いる対照疾患脳のサンプル提供を受けた。2022年度は、質量分析の最終段階に入っている。
④パプア州患者における初めての原因遺伝子解析:2019年度は、Airlangga 大学との MOA締結を完了し、予定通り進捗した。2019年9月にAirlangga 大学を訪問し遺伝子解析グループとの具体的な解析方法について打ち合わせを行った。コロナ禍の影響で2020年度以降現地調査は行えていない。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年明け以降海外渡航を含めた研究活動への制限が続いている。

今後の研究の推進方策

①経年的なフィールド調査と疫学像、臨床像、生活様式や食生活、社会環境の変遷:紀伊半島では、引き続き患者レジストリの整備と自然史の解析を継続する。新型コロナ感染が、ようやく収束傾向であり、2023年度は、グアム島とパプア州でのフィールド調査を計画する。オランダ統治時代のパプア資料について、ライデン大学図書館のホームページ上で調査する。引き続き3地域の疫学像、臨床像、生活様式や食生活、社会環境の変遷と比較について解析を進める。
② 腸内細菌メタゲノミクス: 2023年度は、2022年度で得た腸内細菌メタゲノミクスの解析結果を元に、症例ごとの臨床像と腸内細菌叢との対比を行い、紀伊ALS/PDCに特異的な腸内環境の同定を目指す。
③リスク遺伝子多型解析と環境要因が遺伝子発現に影響し発病に至るメカニズムとしての患者脳を用いたエピジェネティクス解析、質量分析:2023年度は、紀伊半島多数例の患者DNAを対象とし、Long cord leading が可能な新たな次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析とハプロタイプ解析を引き続き行う。2021年度に提供を受けた対照疾患脳のサンプルと紀伊患者脳を用いた質量分析(TripleTOF6600+ SWATH system)を行い、2022年度は、質量分析の最終段階に入っている。2023年度は、結果をもとに bioinformatics解析を行い、エピゲノム解析結果と比較することで紀伊ALS/PDCに特異的なproteomicsを明らかにする。
④パプア州患者における初めての原因遺伝子解析: 2023年度には、新型コロナ感染の収束状況を考慮しながら Cenderawasih 大学医学部との共同研究を進め、Airlangga 大学関係者とともに現地に赴き患者検体の採取を行う。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由
新型コロナ感染拡大により、2020年度以降インドネシアおよびグアム現地調査が中止となりそれに伴うフィールド調査や遺伝子解析が行えなかったため、繰り越し費用が発生した。2023年度はコロナ感染の収束状況を鑑みながら所定の成果をあげるべく研究計画に沿って研究を加速させる。
使用計画:①経年的なフィールド調査:紀伊半島の環境要因調査を行うための費用。グアム島、パプア州のフィールド調査費用。ライデン大学図書館でオランダ統治時代の資料を調査する文献費用など。②腸内細菌メタゲノミクス:腸内細菌メタゲノム結果の検討費用。③リスク遺伝子多型解析と環境要因が遺伝子発現に影響し発病に至るメカニズムとしての患者脳を用いたエピジェネティクス解析:患者DNAを用いた全ゲノム解析とハプロタイプ解析を行うための費用。患者脳を用いた質量分析計(TripleTOF6600+)によるbioinfomatcs分析を行うための費用。④パプア州患者における初めての原因遺伝子解析:Airlangga大学およびCenderawasih大学を訪問し、現地でのサンプル採取や候補遺伝子解析についての具体的な解析方法について打ち合わせを行うための費用。ほかに病理標本のデジタルデータ化、論文の英文校正、投稿料、研究会開催などの費用。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] APOE alleles with tau and A pathology in patients with amyotrophic lateral sclerosis and parkinsonism-dementia complex in Kii peninsula2022

    • 著者名/発表者名
      Ryogen Sasaki, Satoru Morimoto, Fumiko Ozawa, Hideyuki Okano, Mari Yoshida, Hiroyuki Ishiura, Shoji Tsuji, Shigeki Kuzuhara, and Yasumasa Kokubo
    • 雑誌名

      Neurology

      巻: 99 ページ: e2437,e2442

    • DOI

      10.1212/WNL.0000000000201156

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ホットトピックス「疾患概念が拡大するタウオパチーの現在」日本の紀伊半島のALSとパーキンソン認知症複合(PDC)2022

    • 著者名/発表者名
      小久保康昌
    • 学会等名
      第63回日本神経学会総会学術研究会
  • [学会発表] Kii ALS/PDC患者iPS細胞由来グリアモデルを用いた、エクソソーム中網羅的タンパク質プロファイリング2022

    • 著者名/発表者名
      小林博也, 森本 悟, 植田幸嗣, 小久保康昌, 岡野栄之
    • 学会等名
      第63回日本神経学会総会学術研究会
  • [学会発表] APOE alleles with tau and Aβ pathology in patients with ALS/PDC in Kii peninsula2022

    • 著者名/発表者名
      Satoru Morimoto, Ryogen Sasaki, Fumiko Ozawa, Hideyuki Okano, Mari Yoshida, Hiroyuki Ishiura, Shoji Tsuji, Shigeki Kuzuhara, Yasumasa Kokubo
    • 学会等名
      第41回日本認知症学会
  • [学会発表] Kii ALS/PDCアストロサイト由来エクソソーム中タンパク質の特異性2022

    • 著者名/発表者名
      小林博也, 森本 悟, 植田幸嗣, 小久保康昌, 岡野栄之
    • 学会等名
      第41回日本認知症学会
  • [学会発表] 紀伊半島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合患者のAPOEε2対立遺伝子はタウ病理と関連する2022

    • 著者名/発表者名
      森本悟, 佐々木良元,小澤史子, 岡野栄之, 吉田眞理, 石浦浩之, 辻省次, 葛原茂樹, 小久保康昌
    • 学会等名
      第65回日本脳循環代謝学会学術集会
  • [備考] 紀伊半島の筋萎縮性総索硬化症/パーキンソン認知症複合 -Kii ALS/PDC

    • URL

      http://kii-als-pdc-project.com

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公開日: 2023-12-25  

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