研究課題
ブルガダ症候群(BrS)は心電図ST上昇を特徴とし東アジアの中壮年男性に好発する遺伝性不整脈であり、一部の症例は夜間突然死をきたす。致死性不整脈の遺伝的リスクは不明で、発症前に突然死のハイリスク患者を特定する有効な手段はない。BrSの遺伝的なリスクに関する研究は白人をベースとしたゲノムワイド関連解析(GWAS)があるが、日本人を含めたアジア人の解析の報告はない。本研究ではまず日本人BrS 876人と健常コントロール1,146人でGWASを行った。その結果、2013年の白人BrS GWASと同じSCN10A, SCN5A, HEY2に統計学的に有意なSNPを認めた。さらにconditional analysisを行ったところ、染色体3のEXOG近傍, 染色体15のIGF1R近傍に新たな独立したSNPを同定した。これらの5つのうちIGF1Rを除く4つのSNPが欧州人(BrS 2,820人、コントロール17,548人)、台湾人(BrS190人、コントロール15,981人)でも確認された。次に致死性不整脈の遺伝的リスクSNPを解明するために日本人BrSのうち致死性不整脈発症例214人と無症候例325人でGWASを再解析したところ、4つの有望なSNPを同定した。この4つのSNPについて日本人BrS 876人でKaplan-Meier生存解析をおこなったところ、第5染色体のSNPが有意に早期に致死性不整脈発症をもたらすことが判明し、欧州人BrS 2,820人でも致死性不整脈発症のリスクとして再現された。現在日本人の別の200人のBrSコホートでレプリケーション研究を行っている。COVID-19の感染拡大に伴い、フランス・オランダ・台湾・タイの共同研究者との直接の会合は開催できていない。しかしZoomによるweekly meetingで、共同研究の進捗状況を互いに把握している。
2: おおむね順調に進展している
BrSの心電図異常に関連する5個のSNPを日本人BrSコホートで同定した。欧州人でも同様の結果を確認した。BrSの致死性不整脈発症に関連する新規SNPを日本人BrSコホートで同定し、そのうち1個が欧州人BrSでもKaplan-Meier生存解析で突然死と関連することが明らかになった。現在日本人の別の200人のBrSコホートでレプリケーション研究を行っており、結果がまとまり次第論文化する。
最近2,820人の欧州BrSでGWASの新知見が得られたが、2013年に日本人との共同研究で同定した3つのSNP以外は、日本人GWASではヒットしない。すなわち、BrSには大きな人種特異性がある可能性が高く、特に致死性の高い日本人BrSで突然死関連のSNPを明らかにしたいと考えている。
COVID-19感染拡大によって、予定していた国際共同研究会議や学会がすべてキャンセルになり旅費が執行できなかった。また物品についても出荷停止や納入の大幅な遅延によって物品費の執行も極端に低下した。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 4件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Genetics in Medicine
巻: 23 ページ: 47~58
10.1038/s41436-020-00946-5
European Journal of Medical Genetics
巻: 64 ページ: 104125~104125
10.1016/j.ejmg.2020.104125
Translational Psychiatry
巻: 11 ページ: 132
10.1038/s41398-021-01258-1
Circulation: Genomic and Precision Medicine
巻: 13 ページ: e002911
10.1161/CIRCGEN.120.002911
Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology
巻: 13 ページ: e008712
10.1161/CIRCEP.120.008712
Circulation
巻: 142 ページ: 324~338
10.1161/CIRCULATIONAHA.120.045956
BMC Endocrine Disorders
巻: 20 ページ: 90
10.1186/s12902-020-00574-9
Endocrine Journal
巻: 67 ページ: 1099~1105
10.1507/endocrj.EJ20-0044
International Journal of Molecular Sciences
巻: 21 ページ: 6314~6314
10.3390/ijms21176314
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 13562
10.1038/s41598-020-70513-0
Medicine
巻: 99 ページ: e22816~e22816
10.1097/MD.0000000000022816
Clinical Pediatric Endocrinology
巻: 29 ページ: 183~187
10.1297/cpe.29.183
Clin Exp Rheumatol
巻: 127 ページ: 35-41
http://www.ncvc.go.jp/omics/research/project02.html