研究実績の概要 |
ブルガダ症候群(BrS)は東アジアに好発する遺伝性致死性不整脈で、突然死のリスクは欧州人に比べてアジア人の方が高いことが知られている。BrSには単一遺伝子疾患としての疾患遺伝子が多数報告されているが変異陽性率は低く、突然死のリスクや人種特異性に関わるの多因疾患としての遺伝子基盤も不明である。
申請者は日本人BrS 940人でゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、3個の既知単一遺伝子多型(SNP)に加えて染色体1番の新規SNPを 1個同定した。2022年にはフランス・オランダを中心とした欧州人BrS 2,840人のGWASが報告されたが、このグループとBrSの人種横断的なメタ解析によって新規SNPを6個同定した。人種共通のSNPを用いてBrSのポリジェニックリスクスコア(PRS)を確立するための検討を行っている。
BrSにおける突然死の遺伝的リスクを解明するために、致死性イベントありの日本人BrS患者263人と無症候BrS患者423人で致死性不整脈の層別解析を行った。その結果、致死性不整脈と関連するSNP を染色体1, 3, 5に同定し、Kaplan-Meier生存曲線でも確認した。突然死関連3 SNPもうち、染色体5のSNPは欧州人BrSでも突然死と関連することが判明した。BrS関連SNPの他に、性・Naチャネル遺伝子(SCN5A)変異・主成分解析の6因子を加えてCOX比例ハザード解析を行い、突然死に関わる人種共通のリスクと人種特異的なリスクを解析している。その結果を基に個人の突然死のリスクスコアを策定し、発症前予防を目指す。
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