研究課題/領域番号 |
18KK0246
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
金井 隆典 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40245478)
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研究分担者 |
長沼 誠 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (00265810)
杉本 真也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (20626387)
寺谷 俊昭 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (40624408)
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研究期間 (年度) |
2019-02-07 – 2021-03-31
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キーワード | 青黛 / インジゴ類 / 潰瘍性大腸炎(UC) / AhRコンディショナルノックアウトマウス / メタゲノム解析 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
原因不明の難病である潰瘍性大腸炎(UC)は、若年層を中心に増加の一途を辿っており、治療選択肢が広がる中でも依然として既存治療抵抗例・不耐例は多く、既存治療のほとんどは高額で医療経済を圧迫している。私たちは中国で古くから民間療法として様々な慢性炎症性疾患に用いられてきた生薬である青黛に着目し、世界初の多施設二重盲検ランダム化比較試験で難治例UCへの有用性を実証した。青黛の主成分のインジゴ類はAryl hydrocarbon receptor (AhR)リガンドである。本研究では、免疫細胞、上皮細胞、腸内細菌叢さらには腸管微小循環を含む腸内環境におけるAhRの役割を多角的に理解することを目指し、加えて、インジゴ類の代謝物から新たな創薬シーズとなる候補化合物を抽出し、将来的な国際共同臨床試験へ向けた基盤を確立することを目的として掲げた。 本研究が承認されてからの1ヶ月での実績としては、青黛投与マウスの腸内細菌叢の解析及びヒトUC患者の青黛投与後の便の解析結果との比較を行い、また、AhRコンディショナルノックアウト(KO)マウスの繁殖を継続させ、また、免疫細胞の変化についてはメカニズム解析を進めている。 今後は、インジゴ類を投与したマウスの腸内細菌・代謝物の解析を進め、同時にそのうち、新規治療薬やバイオマーカーの候補となりうる化合物について探索し、AhRコンディショナルKOマウスの繁殖後には、同マウスを用いて、AhRリガンドの免疫細胞・上皮細胞への影響を検討する。微小循環については中国・北京大学の韓晶岩教授と連携を取りながら具体的な方策について検討を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AhRリガンドと腸内細菌の関与については、青黛投与したマウスの腸内細菌叢(便移植モデルで大腸炎を抑制した便)について、次世代シーケンサーによるメタゲノム解析を行ったところ、一部ヒトUC患者の腸内細菌叢と類似した変化を見出した。 今後は、大腸炎のみならず、腸炎関連大腸癌モデルマウスや大腸上皮由来のオルガノイドなどを用いて腸管炎症や発癌への増殖および抑制効果を検証していく予定である。また、AhRリガンドの免疫細胞・上皮細胞への影響を明らかにするため、腸管上皮(villin-Cre ERT2)、大腸上皮(CDX2-CreERT2)、T細胞(CD4-Cre ERT2, Foxp3-CreERT2)、DC (CD11c-Cre ERT2)、それぞれの組織にタモキシフェン投与により特異的にCreを発現するマウスとAhRfloxマウスを交配させることで種々のAhR コンディショナルKOマウスの繁殖を引き続き推進している。
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今後の研究の推進方策 |
腸内環境におけるAhRの役割を解明するのにあたり、青黛の成分のインジゴ類を用いた糞便中の腸内細菌や代謝物の解析や、血清におけるインジゴ関連代謝物の解析、及びインジゴ関連物質の血中・便中濃度測定方法の検討を今後行うことで、有効性及び安全性の高い化合物の抽出やバイオマーカーの探索を目指す。また、大腸粘膜固有層で特異的に増加していた胸腺由来とされるHelios陽性の制御性T細胞(tTreg)について、その増加メカニズムや機能についてさらなる検証を行う。微小循環に関しては、生薬の微小循環に対する影響についての解析手法をin vivo、in vitroで確立し、同分野の第一人者である韓晶岩教授と、本年4月末日に中国で国際会議を行い今後の方針について検討していく予定である。また、将来的にヒトに応用する研究を進めていくにあたり、生物種間でAhRリガンドに対する応答性に差異があることはすでに知られており、マウス、ラット、ヒトの細胞を用いたAhRのレポーターアッセイ系を確立した上で、様々なAhRリガンドの活性の違いについても検証していく予定である。上記の検討を行うにあたり、昨年度分の余剰金について、設備備品(PC)、マウスや蛍光標識抗体などの消耗品、国内・外国への旅費、臨時職員の給与、オミックス解析の費用分について、2019年度に繰り越して使用していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
採択後の交付内定が2月だった為、当初の計画通りの支出が不可能であった。
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