研究課題
RAGE/DIAPH1阻害化合物は、米国ニューヨーク大学のSchmidt教授がRAGEの細胞内シグナル伝達因子として細胞骨格関連分子DIAPH1を同定し(Hudson et al., J Biol Chem. 2008)、更にRAGEとDIAPH1の結合を阻害する化合物を探索することにより発見したものである(Manigrasso et al., Sci Rep.2016)。本研究において平成30年度は、Schmidt教授が開発した13種類のRAGE/DIAPH1阻害化合物のうち予備実験から最も効果が期待された1つについて、マウスくも膜下出血モデルを用いて、①血管保護・攣縮抑制作用、②抗炎症作用、③神経保護作用を評価した。①については墨汁入りゼラチンを用いて脳底部ウイリス動脈輪付近の血管攣縮を評価し、②についてはRT-qPCR及び免疫組織化学を用いて行い、③については運動、四肢運動の対称性、金網のぼり等7項目からなる神経学スコアを集計することで算出した。その結果、同化合物が①、②、③のいずれについても強い効果を示すことを確認した。次にこれらの効果がRAGEシグナルの抑制と関連していることを明らかにするために、野生型マウス、RAGE欠損マウスに加えて、RAGEのデコイとして働く可溶型RAGEの過剰発現マウスを用いてマウスくも膜下出血モデルを作製し上記①、②、③について比較検討した。その結果、化合物同様、RAGE欠損マウス、sRAGE過剰発現マウスでは野生型マウスに比べて①、②、③、を強く認めることが明らかになった。また、チャンバーディッシュを用いた検討より、同化合物は白血球の遊走を阻害することも明らかにした。以上より、同化合物が新たなくも膜下出血治療薬候補になり得ることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
マウスくも膜下出血モデルを用いて、RAGE/DIAPH1化合物の①血管保護・攣縮抑制作用、②抗炎症作用、③神経保護作用をを確認できたことは非常に大きな成果であると考える。今後、化合物の投与時期を変更することにより、さらに治療薬としての有効性について検討を行う予定である。
昨年に引き続き、マウスくも膜下出血モデルを用いて、RAGE/DIAPH1化合物の有効性について検討する。特に化合物の投与時期を変更することにより、最適な効果を得られるタイミングを探る。また、メカニズムを明らかにするため、細胞培養系を用いて、特に細胞内シグナルの変化について検討を行う。くも膜下出血に加えて、マウス脳梗塞モデルを用いた検討も開始する。
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