研究課題/領域番号 |
18KK0256
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
荒木 慶彦 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (70250933)
|
研究分担者 |
小倉 淳郎 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 室長 (20194524)
眞貝 洋一 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (20211972)
藤原 浩 金沢大学, 医学系, 教授 (30252456)
鏡 京介 金沢大学, 附属病院, 助教 (80748616)
|
研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
|
キーワード | 卵管 / 受精 / 初期発生 / 着床 / ゴールデンハムスター / OVGP1 |
研究実績の概要 |
自然界において哺乳類はその受精・初期発生は、生体にとって特殊な「体外」である卵管内腔で遂行される。その特殊な場に於いて発育した初期胚は、胚盤胞とよばれる状態になった後、子宮膜に潜り込み(着床)し、妊娠が成立する。全能性細胞(胚)の発生を制御する卵管の微小環境の研究は種の保存という生命現象の根幹に関わる極めて重要な研究課題である。 本研究では我々のこれまでの卵管の胚発生に対する生理的作用の研究成果をさらに展開し、浮遊状態における幹細胞に代表される未分化細胞の機能・分化を調節する液性因子(群)の同定、及びその機構解明を最終目標に本研究を計画した。 哺乳類の中で、ハムスター胚は体外培養が難しく、卵管は胚の生理的環境維持に必須と考えた。その仮説の下、卵管特異的な液性因子であるOVGP1の遺伝子欠損(KO)ハムスターを作製したところ、このKO動物を用いてこれまで以下の実験結果を得た:1) 雌 KOハムスターは完全不妊になる ; 2) 雄KO精子は正常な妊孕性を持つ ; 3) その受精は成立するものの、受精卵は光顕・電顕レベルで異常所見を認める ; 4) その着床数は明らかに少なくなる(初期胚発生は異常が多いが、一部は着床する); 5) 着床しても胚は異常発育し、 最終的には胚性致死になるため産仔は得られない ; 6) KO 卵巣を野生型へ移植すると KO卵由来の産仔は生まれるが、逆の実験では生まれない。 これらの結果はマウス同様に極めて繁殖力の高いハムスターでは、 in vivoでその胚初期発生に OVGP1を介した極めて重要な生理的イベントが卵管内で行われていることを示唆する。即ち、この動物モデルでは、受精卵(全能性細胞)の運命は遺伝的に決まるだけではなく、着床までの卵管微小環境が正常な発育のために極めて大きな意味を持つことが強く示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験自体は概ね順調に進展しているが、COVID19の世界的パンデミックにより、当初予定していたカナダ・Queen大学での共同研究は、実質Zoom会議しか行われていない。
|
今後の研究の推進方策 |
世界の感染状況次第であるが、このモデル動物の実験結果は明確であるので、当初予定していたカナダでの超微形態学的研究は、日本で可能な限り試料を作成して国際共同研究者に送り、Web上で意見交換しながら、時期を見てカナダに渡航する予定である。また今後の発展研究についても議論する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
CIVID-19のパンデミックにより、海外渡航が計画通り行かなかった。 本年度は研究最終年度としてCanada Queen's UniversityにおいてCOVID-19の感染状況を考慮しつつ、研究の発展に向けて実際に渡航・招聘を行い情報交換を主に行う。 また、モデル動物の胚・精子凍結の基礎研究を行う。
|